レビュー:便利なものであり続けろ、自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う

引用:https://jihanki-anime.com/
© 昼熊・KADOKAWA/「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う3」製作委員会
この作品のポイント

不自由さから生まれる対話と交流
自動販売機の便利すぎる使い道
異世界にありがちな収納スキル(アイテム)への再定義

目次

概要

自動販売機マニアだった主人公は交通事故にあった。
倒れる自販機の下敷きになって死亡してしまうが、異世界で自販機として転生してしまう。
彼は自販機になってしまったので身動きはもとより、音声すら事前に用意されたものしかない。

そこに怪力自慢の少女ラッミスがやってきた。
彼女は自販機で購入した商品を気に入り、自販機に意思があることを確認すると村へ連れて帰る。
そしてラッミスは自販機をハッコンと名付けた。
ハッコンは生前得た知識を活用して様々な自販機になり、人々の暮らしを豊かにする。

自動販売機がまともに喋れるはずがなかろう

自動販売機が言葉を巧みに使うものではないので、当然まともなコミュニケーション手段が限られる。
執筆している現在、当作品は第3期に突入した。
ハッコンが迷宮内にいるラッミスたちと交流をするための行動は、話数を得るにつれて豊かになる。
始めはラッミスが何とかハッコンの自動音声のパターンに、何らかの意味を当てはめる方法を採用した。
続いてハッコン側が、プリセット音声の一部を単語で区切って話すようになる。
第2期から3期にもなれば、細かく1文字単位で調整してよりそれっぽく修正してみせた。

残念ながら収録された音声に50音はないので正確な発音はできず、同じイントネーションかつ似た文字を使っている。
残りは聞いた人が想像して内容を推察しなくてはならない。
そのため細かい表現に乏しく、相手の知性に左右されてしまうのが難点だ。
第3期開始直後の時点で、ハッコンの全ての思考や会話を知ることが出来るのは1人だけ。
そのキャラクターも途中参加のキャラクターである以上、レギュラーメンバーではない。

それでも、作中で悪意を持って情報を捻じ曲げようとする人物がいないので大きく問題にならない。
ハッコンへかなり好意的な感情をもつラッミスとヒュールミが近くにいれば、少なくとも騒動に繋がらないのだ。
ハッコンが円滑に人々の生活に浸透、貢献できたのはラッミス、ヒュールミ、熊会長などの善意ある人々の協力があってこそ。

彼は自分の意志で大地を歩き回れず、当然攻撃性能を有さない。
電力なども不要だが、稼働するにはポイントが必要なので商品(サービス)を購入してもらう必要がある。
第1話でラッミスが飲み物の値段を見て、それなりに高い旨の発言をしている。
ただ試しに購入した飲み物が美味しかったので、高いと言っていたにも関わらず複数購入した。
どこでも一定の品質が担保された商品を購入できる利点を見れば、多少高くても検討する価値があるのだ。

現代ならコンビニのようなものだろうか。
コンビニと違い、ラッミスのような怪力持ちなら運搬できるは大きい。
それと、ハッコンの意志か購入希望者の要望によって異なるものを、ラインナップとして即時挙げられる点も見逃せない。
彼らの購買意欲も刺激するので、結果売上が増える。
増えた売上でハッコンが機能拡張、商品の拡充をするので双方プラスだ。

人は誰かを頼らなくては生きていけない。
自販機という人ですら無い何かになってしまったハッコンも、そこから脱却できない。
しかしそれで良いのだ。協力する理由付けが明白なので違和感がない。

自由意志を持つ魔道具という概念が冒険者のラッミスから早い段階で示された。
したがって、ハッコンは全く類を見ないケースについて否定された。
否定した事実が村へ到着する前に制作側から視聴者へ提示されたことで、住民の反応が台本によって捻じ曲げられたものと思わなくなった。
こうした説得力を持たせておくやり方は、とても好ましく思える。
納得できるだけの情報を先に教えてくれるだけでも、視聴者は理解や共感の足しにできるからだ。

また、第3期になっても人型へ変身せず、会話にあえて難をもたせ続けているのは面白い点。
よくある作品なら、遅くとも第2期あたりで1度は解禁してくるもの。
自販機から人に変わること、言葉を十全に使いこなせることが大事なことではない。
自分がどう他人と関わるかが大切なのだと、伝えている気がする。

販売するものが固定されない自由度の高さ

自動販売機と聞いて真っ先に想像するのは、当然町中にある飲み物の自動販売機だろう。
誰もが外に出れば目につく。
スーパーやデパートをはじめ、各施設に置かれているのを見かける。

ハッコンの中は機械ではなく、人の魂が入ったよくわからない何かだ。
彼はゲーム的な情報をもって自販機そのものを強化している。
ステータスについては本編で大した意味もないので、早々に画面から消えた。
いちいち自販機目線でステータスを見せられても鬱陶しかったので妥当だ。

作中、彼は任意でフォルムチェンジの名称でいくつものバリエーションを出した。
菓子類、麺類、冷凍食品、冷菓、衣服、風船……。
果てはガソリンを出す始末。
ガソリンを出したことへの不満点はあれど、それ以外の生活用品を提供するのは平和的で良い部分だと思う。
子どもたちを喜ばせようと風船を用意するのも同様だ。
ご飯と飲み物で体は満たし、玩具で心も満たしてあげる気配りはさらに素晴らしい。
すさんだ状況で救いとなるのは、各人が抱えるメンタルの保ち方によるところが大きい。
食いしん坊で仲間思い、子どもたちも大切にしているシュイがハッコンに懐くのも無理からぬ話だ。

ガソリンへの多大なる不満

さすがにガソリンを自動販売機とみなすのは、理解しがたい部分だった。
確かにセルフサービスならそう見えるものの、実際のガソリン供出の可否は、資格を有する人間が許可を出しているからだ。
ハッコンが出したガソリンスタンドのあの装置、見てくれや動きからしてフルサービスで使う類ではないだろうか。
そこを言い出すとフィクションだから、実際何でもありと返されるだろう。

ハッコンも拡張によって念動力を習得し、自分でノズルを操作できるようになった。
任意の場所へガソリンを放出し、引火させれば火災を起こせる。
第1期の菓子と飲み物の組み合わせよりは、確かに攻撃性の高い手段だ。

ガソリンの初登場後、揮発性の高い可燃性液体を湯水のように放射して、火災を意図的に発生させたシーンがある。
現実で真似はされないと思うが、あれはそこまで便利で器用なものではない。
引火しやすく常温で気化し、僅かな点火源で一気に爆発する危ない代物。
気化したガソリンは空気より重いので下に滞留し、溜まったところに静電気のひとつでも起きれば即ドカン。
あれのどこが素晴らしい武器だ。世紀末的思考すぎる。

筆者は有資格者なので、多少の知識を持っている。
フィクションでガソリンを武器に使う作品は多くあれど、どれも多大な危険性を孕んでいるのだ。
しばしば火災事故を起こすものを、いくら異世界系の作品でゆるく見られるからと、軽々しく扱ってほしくない。
あれほど多量に撒き散らして物事を対処するのは、あまりの危険性にハラハラしてしまう。
迫る森林火災からの緊急措置としてもお粗末な印象だった。

なぜ自動販売機だったのか

自動販売機にした理由は何かと考えてみれば、便利なアイテム設定に気づく。
ゲームだとよくあるアイテムボックス(インベントリ)の概念は、当然だが現実にはない。
山のようなアイテムをどこか虚空へ収納する、夢のような技術はないのだ。

異世界ファンタジー、いわゆるなろう系なら当たり前のようにあるアイテムの収納手段。
それがスキルか、あるいはマジックアイテムか。
名称や仕組みは多少違っていても、物を自在に、無制限に扱える便利設定なのは共通だ。
この作品はそこを自販機の機能のひとつとして設定した。

作中だと、どこからともなく武器や薬などを取り出す場面があるので、完全にこの考えが合っているとは思っていない。
ただ物資運搬でわざわざ馬車を使ったり、商隊の概念がある以上、アイテムボックスが誰でも扱える普及した技術ではないと推察している。
もしあるなら、熊会長がハッコンをどこでも安定した品質で商品提供してくれると評価はしない。
誰でも扱えるなら、わざわざ高い値段設定をしているハッコンの商品を住人が買う理由もない。

ハッコンは自動販売機で取り扱える商品を知識として大量に保有しており、それをフォルムチェンジや商品拡充・拡張で再現できるから商売が成り立っているのだ。
自販機の中を開けて物を補充しているわけではない。
どこかの虚空から補充しているのだ。
衛生面や防犯性にとても優れているだろう。

このような便利な機械へ人間の魂を流し込んだことにより、ハッコンは自由意志を持つ便利キャラになったのだ。
武器弾薬が買えなくても、心身の健康に寄与できるのは相当大きい。
スキルとして自販機を呼び出さず、自分が自販機になってしまうのも目新しさがあるだろう。
意外性をもって楽しませようとする、そのような努力が見えるのだ。

さいごに

ラッミス、ヒュールミ、シュイたちが嫌味なく健康的な美少女なので単純に可愛らしい。
エロ要素のある物語で進行しないのでその手のサービスシーンはない。
しかし、健康的な素直さは見ていて気分が良くなるものだろう。
自販機と人間が恋をするわけもないので、お互いに気になる相手どまりにしてじれったくするやり口も良い。
話の都合もあるが、第3期でもハッコンは自販機のままでいてほしいと願うところだ。


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もしよろしければ確認して、購入するか検討していただければ幸いである。
またこの作品はサブスクで第1期から配信もしている。
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