レビュー:Anotherを見るなら、アニメと漫画だけ楽しむべし

引用:https://www.pa-works.jp/works/another/
©2012 綾辻行人・角川書店/「Another」製作委員会
目次

概要

病気療養のために母親の実家へ身を寄せ、地元の夜見山北中学校へ転校してきた榊原恒一は、どこかよそよそしい態度を取るクラスメートを不審に思っていた。
恒一は同級生の見崎鳴のことが気になっている。
しかし、鳴はクラスメートから無反応のため、幽霊ではないかと思ってしまう。
ある日、彼は3年3組が直面している、ある恐ろしい事実を知ることとなった。
それは、3組の生徒だけが次々と何かしらの事故、事件で死んでしまうということ。
彼らはおまじないと呼ばれる習慣を利用して、自らに降りかかる災厄から逃れようとしていた。
そのような時にやってきた恒一という部外者。始まり、止まることを知らない死の現象。
恒一は鳴とともに、この謎と惨劇に満ちた現象を止めるべく調査していく。

原作をミステリーなどと呼びたくない

Anotherはホラー、ミステリー、サスペンスの3つの要素を元に作られた小説が原作となっている。
そこからアニメ、漫画、映画と派生し、続編が作られるほどの人気作品となった。
しかし、はっきりと述べておきたいことがある。
それはミステリーとしては駄作ということだ。
個人差があるので読者が全てそうではないのは当然である。
にも関わらず、あえて駄作とまできっぱりと決めたのか。
そこには原作の作りの甘さやいい加減さにある。
一人称で書かれる原作小説は、ホラーや謎の隠し、明示をするための措置として選ばられている。
ひどく淡白で空気感丸出し、成人向けゲームなどで頻出するやたら影の薄いキャラクター像が浮かび上がってくるのだ。
現象の正体(大元というべきか?)は悪意や怨霊の類になく、システマチックに存在しているだけなのがかえって容赦のない惨劇を生み出していることに関しては良いと思う。
だが、物語の核心たる死者の正体(正確には恒一が巻き込まれた年の正体)が駄目だった。
アニメでもかなり秘匿された黒幕(死者)の正体だが、どちらも後半の解答のシーンにたどり着かなくては正解を当てて真相に至るのは困難だろう。

アニメならまだこの人が黒幕だったのは納得できる。
結構な後出し感はあったが序盤からそれっぽい(ヒントとは到底わからないような)伏線がいくつか仕掛けられていたし、それを描写されたことで理解できた。
しかし原作はその部分を投げ出したのだ。
正体の部分を事前にいくらでもずらしこめるように、予防線をあちこちにこれでもかとわかりやすく張り出す。
キャラクターの会話ですら複数の余地が残るようにしておく。
その上でミステリーだぞ、謎が解けるか、みたいな感じの文章を延々と読まされるのだ。
苦痛なことこの上ない。
これを駄作と言わずに何と呼べばいい? 地球資源の無駄と評するべきか?
少なくとも筆者はアニメの切り抜き、遊技機の映像から興味を持ってアニメを見た部類だ。
そこで漫画がだいぶ弄られた割に好評だったと聞きつけ、さぞ原作は素晴らしいと(愚かにも新品で!)上下巻を購入して読破した。
結果は散々、この程度のゴミ丸出しがミステリーとは片腹大激痛であり、これを良しとした作者と編集へ大いに失望したのは語るまでもない。
嬉々として買った本は2冊とも焼却処分のために袋へ投げ込まれたのだった。

このように今でも時間の無駄、金の無駄だとして原作を読むなと友人知人に強く主張している。
アニメは原作と違って可愛げがあり、マイルドで、制作側から調整されたので見られるものに生まれ変わった。
もしかしたら、原作者こそ現世へ唐突に迷い込んでしれっと居座っている現象の正体なのかもしれない。

ホラーのはずだと同意を求めたい

さて物語そのものに目を向け直すと、正体不明の現象から逃げ惑いつつも災厄を止めるために走る恒一たちが見える。
現象は目には見えず、耳にも聞こえず、3組の人間が主に被害者となっていくのだ。
時々彼らの関係者が巻き込まれることもある。
基本的には事故などで死ぬ。死ななくても周囲で惨劇が起きるたびに精神の均衡が乱れてしまい、発狂することで惨劇の片棒を担いでしまうキャラクターも多数登場した。
彼らは元々善良な人物だったが、度重なるストレス、終わりの見えない絶望からおかしくなったのだ。
それも反転して狂人になるときは一瞬。さっきまで笑っていたあの子が、今では凶器をもってこちらを殺そうと走ってくるのだ。ここはまさにホラーといえる。

また、現象は舞台となった土地を離れようとしても発動する。
引っ越しして新しい場所へ行こうとした家族がまとめて死んでしまうなど、回避方法は実質なし。
助かりたいなら現象を引き起こす黒幕、死者を討ち果たす以外に道はない。
だが恐ろしいことに、この死者は生者と見分けは一切つかない。
思考も常識的なので、誰が本当の死者かを見抜けないのだ。
そして死者をどうにかして殺せたとしても、根本的な解決はしない。
これは全てでそうだったのだが、倒したから災厄は消え去ったではない。
あくまでその年の災厄は終了しただけなのだ。
つまり永遠と繰り返される惨劇である。
もはや彼の地に生まれたことを悔やんだほうが早いかもしれない。

そして黒幕の正体がわかったところで記憶から徐々に薄れて消えてしまい、誰だったかも曖昧になっていく。
故に救いのない話だし、ハッピーエンドと決していえない状況で終わってしまうので読了感がすっきりとしない。原作、アニメ問わずそのままで投げっぱなして終わる。
そうした意味でもホラーだろうか。
かつて自分たちが発見した先輩からの音声データを、今度は後輩たちへ向けて自分たちが作るのも、暗すぎる未来への徒労感がにじみ出ている。
ホラーもののお約束として、重要な情報は偶然にも該当する部分だけノイズが走ったり消されたりとやりたい放題。
これはホラーへの文句のひとつだが、単に絶望だけさせてろくな救いもないのは、ただ不愉快なのでやめてほしいところだ。

アニメは現象によってクラスメートが死ぬシーンが切り抜きでもネット上に転がっているくらい、それなりの人気ぶりである。
ただしそれは怖いからではなく、雑すぎる死に方が笑いを誘うからだ。
階段から滑り落ちるとき、持っていた傘が踊り場へ落ちていった。
傘は衝撃で開き、骨組みの中心たる石づきが落ちる生徒側へ向いていた。
本来なら石づきは鋭くないよう加工されているが、このとき開いた傘のそれはアイスピックのように尖っていた。
そして落ちてきた生徒の首にちょうどよく先端が貫通し、生徒は窒息(あるいは失血)死した。

どう考えてもツッコミしか出てこないほどの雑さと都合の良さだ。
当時は某教育番組の◯◯スイッチをもじった言葉でネタにされていたくらいの酷さに言葉も出ない。
本当なら人が抵抗できずにひとり、またひとりと死んでいくのは恐ろしいはずなのに、ドミノのように装置感満載の謎の死に様劇場をあれこれ見せられても恐怖以上に笑いしか出てこない。
もしかしたらコミカル路線に見せることで、恐ろしい映像を少しでも和らげようとした制作側の気遣いだった可能性も、頑張れば僅かながら感じられる。

人気で運命を捻じ曲げて勝利した女

原作、アニメ、漫画は生存者が微妙に異なっている。
さらに死んだ経緯すら違うこともある。
その犠牲者の中で本来なら端役のひとりとして雑に消えていったとあるキャラクターが大躍進を遂げた。
その名は赤沢泉美。容姿はツインテール、目鼻立ちの整った気の強い美少女キャラクター。
アニメではそのデザインが大いに受けて大人気となり、鳴と赤沢のダブルヒロインのようにも見えるほどだった。
結末はメディアごとに異なっている。その中でも特に漫画版、次いでアニメが評価の高いものになっている。
彼女の運命が気になる人はアニメと漫画の両方を見てみるとよいだろう。
ただの嫌味な役どころがあそこまで人気を博してしまうのは制作側にとって予想外だったらしく、また原作を事前に読んだ人からも驚きだった。
とはいえ主人公に近いレギュラーメンバーとはならなかったので活躍する時間は少なめである。
鳴がダウナー系なのも、赤沢のはっきりした態度が受け入れられた背景のひとつだろう。
アニメは恒一に好意を抱く様子もはっきりとしており、遊技機の映像演出のひとつでその部分を言及されるものもある。

さいごに

ほとんどが罵倒、批難だったがアニメや漫画は決して駄作の烙印を押されるほどではない。
赤沢の扱いは格段に良いし、何よりミステリー要素をまだ感じつつもサスペンス感も残せていたからだ。
死に様がネタにされていることから笑いの種にされているものの、実際見てみるとそれなりに恐ろしいシーンだったり、あるいは狂気じみた演出にひやっとするものを感じられるだろう。
重ねて伝えたいのは、原作は決して読まず、アニメと漫画を十分楽しんだらそこで終わったほうが幸せだということ。
知らない方が幸せなこともたくさんある。
あの書物は、まさにそれが当てはまるのだ。


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