レビュー:時を超えた再会に気づけたか、セレビィ 時を超えた遭遇

引用:https://www.pokemon.co.jp/tv_movie/movie/2001/
©Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku ©Pokémon
©ピカチュウプロジェクト2001
目次

概要

森の境界線で、ユキナリはトワと出会った。
「森の声を聞いたら動かないこと」という忠告を受けたユキナリは、森の中でスケッチをしていた。
そこでユキナリはポケモンを捕まえて金稼ぎするハンターから追われる謎のポケモン、セレビィを守ろうと逃げている内に、セレビィの力で時空を飛び越えてしまう。
時を超えた先の時代は40年後の世界。
目が覚めたユキナリの眼の前には、ポケモンマスターを目指して旅するサトシ一行がいた。
サトシたちはセレビィと心を通わせ、友達になって楽しいひとときを過ごす。
しかし、セレビィを手中に収めるべくロケット団最高幹部のビシャスが、サトシたちに襲いかかる。
森のポケモンと協力しつつ戦っていたサトシたちは、ビシャスに一度は敗れてしまう。
ビシャスによってゲットされたセレビィは様子がおかしくなり、ビシャスの言いなり人形となって全てを破壊しようと動く。
絶体絶命の危機になった時、サトシとユキナリのピンチを救ったのは伝説のポケモンの1匹、スイクン。
セレビィと森を救うため、サトシたちは再びビシャスへ挑みかかる。

時渡り

空想作品において、時空間を飛び越える演出はしばしば見られる。
それは距離を無視してある地点からある地点まで行く瞬間移動だったり、また出発した時代から未来や過去に飛んでしまうタイムスリップだったりする。
セレビィは時間を飛び越えて移動するポケモンだ。
ユキナリ少年に出会う前、ハンターに追われていたセレビィが時間を飛べなかったのは、移動するまでに時間がかかってしまうからだろう。演出と言われたらそこまでだが。
物語冒頭、目玉ポケモンのセレビィが逃げ惑い、ユキナリはトワから忠告と木の実のパンを貰って森へ入る2つの視点で始まる。
純朴そうなユキナリはその見た目通り心優しい男の子。
わけも分からず、とりあえず追われて複数のポケモンに襲われていたセレビィの味方になるくらいには。
彼は森へ来た目的は、ポケモンのスケッチだろうか。
キレイハナの観察をスケッチブックへ書き込んでいるところを見ると、かつてタケシの代わりとして出てきた割には人気が無かったケンジを彷彿とさせる。
逃げの一手しか打てないユキナリとセレビィ。
セレビィが叫ぶと森は光りだし、祠の前で彼らはこつ然と消えてしまった。
地面にはユキナリが描いていたスケッチブックだけ残して。
この時の発光現象は森の外から見えるほどの強さだった。
後の森の発光現象のシーンで、外からはっきりと見える描写がわざわざ挟まれるくらいには強い光なのだ。
ユキナリたちが消えて40年後。
ハンターは年老いていた。そこへロケット団のビシャスがやってきて、情報とバンギラスを強奪した。
そしていつものタイトルロゴの表示である。
おなじみのメインテーマの始まりが流れ、サブタイトルが出てくるのはどのポケモン映画を見ても感動してしまう。
オープニングは初期の作品らしく、初期のオープニング曲のアレンジ。
テロップを出しつつ、サトシやピカチュウがバトルしたり何かのアクティビティをするのも定番。
少年アニメらしさを前面に出してくれるのが相変わらず安心できるつくりだ。

セレビィとの和解、夜明け前の会話のちぐはぐさ


連絡船の出港時間を超えてしまい、無理やり桟橋から飛んだサトシ。
彼を掴んで助けてくれた青年はホワイトといい、サトシたちはホワイトの村へ向かう。
途中滝で行く手が阻まれたものの、船は変形して飛行船へ変形してそのまま村へ到着した。
いきなり飛行船にならなかったのは、エネルギー効率の問題だろう。
ポケモンがいっぱいいる森の境界線へ来たサトシたちは、トワから忠告を受けた。
その姿は40年経過しているので当然老けていた。やたら高い樹上の家にいるので足腰は相当なものである。
さて、森へ入って早々森の声といわれた発光現象を見たサトシたちは、気を失っていたユキナリを運んで戻ってきた。
ユキナリの姿を見て、驚きの表情になるトワ。
40年前に消えた少年をトワはずっと覚えていた。
ユキナリにとっては、さっきパンをくれた人と眼の前の老婆が同じ人物だとすぐに気づく。
トワは彼らに時渡りをしたと教え、次いでセレビィについても話した。
傷ついたセレビィを思えばいてもたってもいられず、救助を決意した一行。
朽ちた大樹の穴の中にセレビィは潜んでいた。
人間に危害を加えられたことで怯えるセレビィは、自己防衛の本心からサトシとユキナリに攻撃する。
そこで2人はひたすら真摯に接して、セレビィは彼らを受け入れた。
気絶したセレビィをポケセンに運ぶため森の出口へ走っていると、いつもの奴らの姿が出る。
ただ、ロケット団のくだらない初登場は見なかったことにしよう。

問題はビシャスの方だった。彼は巨大なマシンに乗ってセレビィを捕まえようとした。
コジロウが勘違いでマタドガスの煙幕で妨害したので、一旦は距離を稼げていたが再び追いつかれる。
ユキナリはリザード、サトシはベイリーフを出す。
ユキナリのモンスターボールはクラシックを通り越して、見たこともない作り。
基本的な性能は同様らしい。
難なく撃破してさらに逃げると、森は霧に包まれた。
リングマが現れ、すわ戦いかと思ったらついてこいとばかりの反応。
そこから森のポケモンたちが入れ替わりで案内を続け、一行は命の泉へ導かれた。
水へセレビィを漬けてみるとセレビィは復活し、喜びを全身で表す。
セレビィは特に助けてくれたサトシとユキナリに懐いており、彼らと水へ空へとつれて遊ぶ。
そのついでにカスミの膝の怪我をささっと癒やし、サトシたちはしばし空を楽しむ。
ひとしきり遊び、村の方向を確認した彼らは森から帰ろうと歩く。
道中ポケモンと人間どちらも美味しく食べられる木の実を堪能する。
ここでサトシはお土産に何個か摘んでいた。
後にこの木の実は使われることになる。

夜明け前、サトシとユキナリは家族のことや夢のことを話し合う。
サトシは母親が自分のことを心配しているだろうと話すが、その割に連絡を入れて現状を教えているイメージがわかない。
オーキド博士と連絡するのはポケモンについて聞きたいこと、知りたいことがあるからで、そこに母親に自分が今どうしているかを伝えているように見えないのだ。
だからこの夜明け前の会話は、サトシがユキナリの不安な気持ちや立ち位置に気を使う形で話した可能性がある。
手紙ひとつろくに送りそうもないサトシが、唐突にママが心配だの何だの言ったところで説得力がないのだ。
せめて最序盤でオーキド博士と話す時にサトシの母も登場させるべきだった。
ある程度前置きの情報があればサトシの言い分も通るところだが、何もないところからぽっと投げつけられたものなど響くはずもない。
ユキナリにはそれなりに届いたかもしれないのが、かえって視聴者には蚊帳の外へ置かれた気にさせられる。
このあたりは構成、脚本の問題か。

時を超える能力は運命すら超える

ビシャスによってゲットされたセレビィは、邪悪なパワーによって暴走状態に陥った。
ビシャスの命令に従い、森のポケモンを破壊しつつ行進していく。
サトシとユキナリはスイクンの乱入、共闘によってセレビィの下へたどり着き、懸命な呼びかけでセレビィの精神をもとに戻す。
樹木を纏って作り上げた化け物は湖に沈み、サトシたちは無事に帰還した。見かけだけは。
セレビィはビシャスによって無理やり力を行使させられていた代償で、生命力を大きく失っていた。
何とか最後の力を振り絞ってサトシとユキナリを安全に空へ脱出させたが、そこまでだった。
湖の畔で全員合流する。
サトシに抱きかかえられたセレビィはみるみる内に萎れ、草木のように枯れてしまう。
水に漬けても戻らない。
森を壊して湖すら死にかけていた。スイクンが力を発揮して水を浄化するも、効果は全く無い。
サトシは縁に座ると、セレビィが好きだった木の実を与える。
セレビィは身動ぎすらせず、木の実は湖に落ちていく。
何度も繰り返しても結果は変わらない。
セレビィは操られて暴走しただけ。悪いのはポケモンを操って欲望のまま振る舞った人間である。
サトシとユキナリの叫びが虚しく響き、涙は水面に落ちる。
涙がどれだけ流れようと、野生のポケモンたちがそれぞれ泣いても、失われた生命は消して戻らない。
きっぱりとセレビィは死亡した。

歴代のポケモン作品で死亡描写はそれなりにある。
はっきり死体が残ったままのパターンもあり、セレビィもそれに該当する。
劇場でサトシ一行に感情移入したまま、セレビィの遺骸を抱えるシーンを見た当時の子どもたちの心情は、いかばかりのものだっただろうか。
様々な叫びが天に届いたのか、空が光と音を発する。
時渡りの現象が発生したのだ。
黄金の天空より降りてきたのは、何体ものセレビィ。
彼らは同胞の死にどこからともなくやってきた。
亡骸を抱えて天に昇っていき、光と共にくるくると回る。
奇跡的な力の発現によって、死したセレビィは命を与えられ蘇生した。
森の守り神たるセレビィは運命すら覆したのだ。
蘇生したのを確認すると、セレビィたちはいずこへ消え去った。
残ったのは、サトシたちと一緒にいたセレビィのみ。

天使のような、絵画のような神秘的なシーンで終わるかと思いきや、ビシャスが超長時間水に潜んで機会を伺っていた。
セレビィを捕まえて上空へ逃げるビシャスの足に掴んで共に空へ躍り出たサトシは、ピカチュウに全員まとめて10万ボルトで攻撃することで装置を壊し、ビシャスの野望は完全に打ち砕かれた。
ビシャスは捕まり、森に再び平穏が戻った。
セレビィはこの時代での最後の使命とばかりに時渡りを発動した。
ユキナリを元の時代に戻すために。
時代が違っても友達だと確かめあったサトシとユキナリ。
時の流れは連続している。
40年、ユキナリの年齢を考えれば問題ないものの、事故や病気などで早逝してもおかしくないくらいの長さだ。

ユキナリが目覚めると、そこは40年前の彼の時代。
ユキナリは時渡りを見て急いで探しに来てくれた若き日のトワに、とても良い夢を見ていたと返す。
セレビィの姿はどこにもなかった。

時を超えた再会

エンディングはサトシたちがハテノ村に別れを告げるところから始まった。
マサラタウンに住むオーキド博士の家に視点が移る。
家の掃除をしているオーキドとケンジ。本の山が崩れると、古ぼけたスケッチブックが出てくる。
ケンジが中を改めると、それはユキナリが描いていたもの。
背後ではオーキドがくしゃみをした。ケンジは本棚にしまうと、掃除を再開する。
あのスケッチブックは当然売り物に見えない。鉛筆のラフスケッチがいくつもある程度のものだ。
だからこそあれを所有していたということは、過去のユキナリ少年は40年後の現代でも生きていたことに繋がる。
そしてその正体はオーキド博士だった。
本名はオーキド・ユキナリであり、当時は書籍で確認できる程度の情報だった。
後に正式な設定となり、人々に広く知れ渡ったのはこの映画が初だろう。
海外版ではこの正体について追加シーンが足されたそうだが、残念ながら日本のオリジナル版では映像ソフト化した今でも追加シーンはない。

夢を迷っていた少年は立派な大人に育ち、かつて夢見ていたものを次世代の子どもに託した。
歴史の修正を考えるなら、ユキナリ(オーキド)は少年時代に未来へ一度飛んでサトシたちと交流し、40年後の世界でサトシを冒険の旅へいざなったといえる。
後から足された設定なので、当然初代ポケットモンスターのゲームやアニメでそのような描写はない。
しかし後付といえど公式情報故に、オーキドはサトシのことをずっと知っていて誘ったのだ。
序盤、サトシたちがスイクンをちらと見てオーキドへ連絡した時、オーキドが迷うことなくスイクンの情報を与えたのも伏線である。
いくら博士といえど、断片的な情報をテレビ電話程度の僅かな時間でぴったし当ててくるのは至難の業である。

もしかしたら、オーキドがこのときの記憶を保持していたなら、サトシたちがセレビィと冒険を繰り広げている裏側で当時を振り返って懐かしんでいるかもしれない。
セレビィは40年経過した今でもひっそり生息している。
サトシたちが座って休憩している後ろ、木々に隠れてセレビィがちらっと映ったように。
その個体がかつてのセレビィと同一かは不明だ。
しかし彼らが生きているなら、それは未来においても彼らが生きる世界のまま、平和な世が続いている証拠でもある。

さいごに

もしこの話のテーマが人と自然の共存といったものだったならば、残念ながらその手のメッセージは受け取れなかった。
セレビィの死についてユキナリは、人間のせいでセレビィが死んだから人間が悪いという内容を叫ぶが、それはそうとしか返せない。
凄まじく屁理屈を言えば人間の行動自体も星からすれば自然活動のひとつであり、人間こそが諸悪の根源だとみなすのは、人類が地球における絶対的な存在だと決めつけているにほかならない。
それはそれで大分思想染みた物言いであるし、驕り高ぶった様が実に愚かな人間らしいともいえる。
したがって共存がテーマとして掲げられていたなら受け取れなかったし、評価はできない。
ただ時をこえた不思議な出会い、そして再会があっただけだ。
それで良いのではないだろうか。
キャッチコピーはこんなポケモンに逢ってみたかったという願望丸出し。
人とポケモンの関係性についても希薄な上に、そういった高尚なものを感受しながら見るべきでもないと筆者は思っている。
もっと自由にあるべきだ。硬い思想など、そこらの批評家たちに好き勝手言わせておけばよいのだから。


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