レビュー:外科医エリーゼは、皆賢くて見やすい医療アニメだぞ

引用:https://surgeon-elise.com/
©yuin,mini/Surgeon Elise Project
目次

はじめに

医術アニメは中々手が出しにくいイメージだ。
ファンタジーが絡みにくい題材なので、どちらかといえばドラマで取り上げられやすいテーマなのではないだろうか。
内容はある医者がとてつもない技術をもって人を救うのみにとどまらず、時には患者の関係者に人生の訓戒を与えることも多い。
ややもすれば説教くさい内容になりがちだが、そもそも医療従事者は高い技術や知識を求められる。
だからこそ診察する医師に対して、(筆者を含め)受診した患者は彼らを先生と敬意をもって呼ぶのだ。
その地位に至るまで積み上げた時間と労力は計り知れない。
しばしば医者は高給取りすぎる、何とかしろだのと言う人もどこかにはいる。
だが、あそこまで人生を費やしてなっただけではなく、続ける限り一生つきまとう責任の重さに我々が耐えられるかを今一度見直してもらいたいものである。
さて、この外科医エリーゼは医者を目指す物語だが、冒頭の内容はなろう系全開である。
筆者は冒頭の時点で見る気がそれなりに失せていたが、その後はそこそこ楽しめたので最後まで視聴できた。
これから見ようという方は、どうか最初の量産系なろうのどうしようもない部分をスキップして視聴するとよいだろう。
どのなろう系にも言えることだが、転生や転移問わず、冒頭の設定や話が面白かった試しはほとんどない。
面白くもないのに延々と似たような設定やストーリーラインをなぞってくるから嫌気がさすのだ。
そしてそれらが後に役立つこともほとんどない。
何を求めてあの描写を文章や動画で表現したいのか理解に苦しむ。
つまり、見ても見なくても大差ないなら飛ばせばいい。
似た設定が蔓延しているので、飛ばしたところでいずれ勝手に理解するのだから。

概要

エリーゼは皇后だったが、その行いが度を過ぎていたために処刑された。
彼女の魂は現代にて新たな生を授かり、今度は償いの気持ちを込めて生きようとする。
貧しい家庭の出身ながら外科医として大出世を果たすものの、飛行機事故にあってしまう。
自身の怪我をおしてでも他者を治療し続けたせいで命を落とした彼女は、再びエリーゼとして生まれ変わる。
3回目の人生は1回目と同じ人生の道中、15歳の頃の自分にある意味で戻ってきてしまったのだ。
頭の中には2回分の人生と技術がこびりついている。
わがままお嬢様だった過去の自分を払拭するべく、再び医者としての人生を走ろうとするエリーゼ。
だが、その知見や高すぎる技術に皇帝のみならず、多くの人々を驚かせた。
そして皇帝は、エリーゼを医者よりも皇后として国を支えてほしいと強く思うようになる。
エリーゼは皇帝とある賭けをすることとなった。
自分の誕生日を迎える前に、皇后として生きるよりも優れた価値があることを示す。
示せたら医者の道を、出来なければ皇后として王族を支えるという内容である。
期限は半年程度しかない。
道を諦めきれないエリーゼは、これまで培った技術と知識を駆使して人々を癒やし、自分の人生を勝ち取ろうとしていた。

輪廻転生周りの諸問題

冒頭でも述べたが、3回目の人生を生きることになったエリーゼの話は完全に無視しても構わない。
全く面白みもなく意外性に欠け、オリジナリティも皆無なので時間をかけて見る必要がない。
3回目は1回目と同じ人間として生まれ変わる(というのが正しいかは分からない)のは、一体どのような意味があるのだろうか。
まず3回やる意味がない。転生したいだけなら2回で良い。
次に医療系アニメをしたいなら転生しなくても良い。
不良が医療従事者を目指す話にしても不都合はない。
皇帝との賭け事にしても、現実世界なら派閥争いや出世競争などで代用もきく。
続いて、魔法がある必要性がない。
医療行為に関しては魔法のオカルト要素がない、現実にそった手法によるものだけで構成されている。
正しい行為かは素人なので判別がつかないものの、少なくともやっている診察や手術は現代のドラマでもありそうな内容ばかりだ。
これをファンタジー世界でやる理由とは何か?
まともに説明できない以上、世界設定に問題があるとしか表現のしようがない。
魔法に関しても王子の超常的な力と、アーティファクトを用いて別人のように変身する程度。
魔法すらいらないのだ。原作からして何をしたいのかが理解できない。
魔法を有効に物語で活かせないなら不要だ。

電気はあるのか、ないのか


何を狙って中世ヨーロッパ風にしたのかすら意味不明。
それほど当てにならないネットの情報を見てみると、中世は5~16世紀くらいだろうか。
1000年程度の長い時間のどこを切り取ったかは定かでないものの、エリーゼが働く町のレベルが高いのだ。
石畳があちこちに整備され、上水道がある。建物内の明かりはガス灯にしては明るすぎる。
電気が走っているとなると第4話でハンスが要求した心電計の電源は確保できるだろう。
心電計の発明は20世紀になってからなので、相当技術背景があやふやな割に高いのだ。
そして全編通して気になっていたのが、電気があるとするなら運送に関することはどうなったのかという点だ。
旧時代、運輸は陸の上なら鉄道、海の上なら船が主流。飛行機はさすがにありえないので除外。
鉄道を使ったシーンが全く無いのだ。
医療を主眼に置いたから鉄道は書かなくてよい判断は無難だと思う。
ただ全く貴族同士の間の話題にすらならないのは違和感がある。
王宮にやってくる貴族の中にはいるであろう、運輸に関して実権を握っている奴らがいない。
それどころか、その手の事故でもエピソードは出来るのに出てこないというのは変だ。
電話機が見られなかったことから電気はないと見るべきか。
それならハンスはどうやって心電図を見るつもりだったのか。電池の技術ならあるとでも言い張るのか。
ポータブル機器、バッテリーどちらも小型化されたものがいち病院の庶民への診察目的でポン出しされる程度の気軽さだ。
それなら電気はありふれた技術で、そうなればあるはずのものがないことがおかしい。
言い出すとキリがない。堂々巡りとはまさにこのこと。
序盤だけ見てもこの矛盾と違和感の山。
ただ見ているだけでも妙に技術高いなと思ったが、改めて考えるとおそろしくなってくる。
やはり中世ヨーロッパ感を出したのは失敗だと感じる。安直に世界を決めた弊害だ。

脇役でも賢い

このアニメで褒められる良いところは、脇役の知能が高いところ。
こうしたなろう系のような作品群で散見される、やたら題材となったテーマに対して理解が浅い人類で満たされているということがない。
エリーゼが務めるテレサ病院には、ハンスというグレアムにいつも怒られているキャラクターがいる。
ハンスは緊急性の高い患者がくる病棟に配属されていることもあってか、怪我や病気の患者におびえて硬直せず、的確に自分の仕事を全うしているのだ。
また、エリーゼの師匠となったグレアムや皇帝の診察もするベン子爵は、確かに知識面でエリーゼに一歩及ばないものの、ひとかどの人物として活躍する。
彼女が行った手術での技法や知識にあたりをつけたり、即座に意味を理解できるのだ。
はっきりいえば露骨な悪役以外全員有能である。
エリーゼの恋敵だったユリエンですら教養深く、慎みのある素敵な淑女として描かれている。
こうした脇役たちが知能面において多大な問題を抱えず、正しく地位にあった能力や実績を収めていることに対して称賛を送りたい。
主人公だけが最強、外が無能など国家運営どころか民衆の明日の食事すらおぼつかなくなる。
ひとりで全て解決できるなら、それこそ全知全能の神にでもなって神話でも作っておけばよいのだ。
見たいのは扱う題材、テーマに沿ったドラマであり、人々の選択や感情の交換だ。
その点において外科医エリーゼはとても丁寧にこぼされがちなキャラたちを立てている。
周りがただ無能なイエスマンにしておかないだけで嫌悪感がこれほどまでに無くなるのだから、どの作品も知能に関する極端な調整は厳に慎むべきである。

エリーゼの将来

医者にさせないため、皇帝が仕掛けた壁はある種正統なものだった。
エリーゼのみに嫌がらせをせず、単に医師試験の難度を上昇させるだけだった。
裏事情を知らない医師見習いにとってははた迷惑な指示だったが、人の命を預かる立場の人間は高い能力と経験に裏打ちされているものと見るなら妥当な判断といえる。
難しくなった試験を突破したものは、間違いなく(知識においては確実に)医者として活躍できると証明できる。
歴代最高得点を叩き出し、首席合格となったエリーゼは最早誰にも止められない存在になっていた。
字が汚い、自分の体に不養生というマイナス面は些細なことだ。
ついには皇帝もエリーゼへの提案を改める。
互いに後悔の残る生き方があった。エリーゼは一度も間違えない人間はいないと皇帝に伝えた。
賭けの条件を取り下げようとした皇帝を、エリーゼが止めた。
まだ勝負はついていない、より価値のあるものを生み出すと皇帝へ約束した。
これからもエリーゼは多くの人に支えられながらも、医者として人を癒やすのだった。

さいごに

世界観には多大なる欠陥が露見している。
しかしキャラクターが全員愚か者でないこと、魔法などのオカルト要素でなんちゃって医療をしないことは素直に評価できるだろう。
ストーリーも医療に比重が重たくされている。
変装した皇太子との関わり、かつてライバル視していた仲の悪い家の娘との友情といった部分はさらっと触る程度。
それでも雑に処理された感じがしなかったのは、やはりキャラの動かし方や考え方が好みと一致していたからだろうか。
変に構えて見なくて良い分、外科医エリーゼはさっと一気見するに値する作品だと思っている。


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