レビュー:ゴーストハントで、あなたもゴーストハンター達を見てみないか?

引用:https://www.marv.jp/special/ghosthunt/www/index.html
©小野不由美・いなだ詩穂・講談社/「ゴーストハント」製作委員会

一昔前にゴーストハントというホラーアニメがあった。
放送年は2006年。当時深夜アニメに浸っていた頃、偶然に新聞の深夜枠に書かれたこの
タイトルが気になって録画したのがきっかけである。
当時インターネットはWindows XPがまだ立派な現役時代。翌年にはVistaが発売され(そして割と酷評されていた気がする)、世界に初代iPhoneが発表および発売された。
さて、まだまだそのような古臭い時代には固定電話は多くの家庭にあり、携帯電話を持っている学生などはそれほど多くなかったと思う。古い時代には、古い噂が根強く残っていたものだ。
学校の怪談をはじめ、数々の都市伝説がまことしやかに語られていた、あのどうしようもない胡散臭さ。
令和になった今日、学校で何かを見聞きして広げていったあの怪談話はどこへ行ったのだろうか。
何をするにしてもスマホが常に傍らにあっては、レトロホラーなど大した脅威を体験できないかもしれない。
加速し続ける情報社会の中に消えていったあの感覚を再び味わうために、あえて懐かしい作品やジャンルを覗き込むのも悪くないだろう。
古い作画の癖と演出を見てみれば、当時の流行りがすぐ分かる。
ついでに僅かでも恐怖と不思議感をその身に得られたら幸運だ。深夜のホラーアニメを見終わって眠る前に行くトイレまでの道のりこそ、ちょっとスリルを楽しめる非日常の瞬間のひとつなのだから。

「ゴーストハント」の関連商品はこちらから。
https://amzn.to/3PcOSC1
https://amzn.to/4r691XW
https://amzn.to/46Dk3fR

目次

概要

高校生の谷山麻衣が過ごす学校には旧校舎があり、そこで心霊現象が発生した。
渋谷サイキックリサーチなる調査事務所が調べに来たのだが、麻衣は不注意によって助手に怪我を負わせた挙げ句に高価な機材を壊してしまう。
しかし金銭で弁償できない麻衣は、代替案として所長である渋谷一也の助手代理に任命され、心霊現象の調査を協力することになった。
自称普通の高校生の麻衣はナルシストの渋谷一也(ナル)、生臭坊主の滝川法生(ぼーさん)、イマイチ能力が当てにならない松崎綾子、プライドの高い原真砂子、どこか抜けているジョン・ブラウン、寡黙で無愛想な助手のリン達と一緒に不思議な怪事件へ挑んでいく。

悪霊シリーズ

ゴーストハントと神霊狩/GHOST HOUNDは異なる作品である。


始めに、このアニメと近い時期に「神霊狩/GHOST HOUND」というタイトルの作品がある。
これは放送が2007年と1年しか違わないこと、タイトルが少し似ているので同じものかと誤解されることがある。実際に筆者も誤解していた。
しかしゴーストハントの著者である小野不由美は神霊狩/GHOST HOUNDの制作に関わっていないので、両者を同じとみなすのは不適格である。
ただしどちらもミステリー、ホラーといった要素は有しているので、そういったものが好きな方はどちらも楽しむべきだろう。

さて、話をゴーストハントに戻すがこの作品はホラー小説が原作であり、初版発刊から結構時間が経ってからアニメ化された。
それ以前に、ゴーストハントというタイトルすら存在していなかった。
当初、悪霊シリーズとして発刊された小説がラジオドラマ・漫画化する際にゴーストハントの名義を得たのだ。
そして改稿のうえでゴーストハントと改題され、再刊された経歴がある。
また、時代の変遷によってデザインも変わっている。
アニメの絵はメディアファクトリー幽BOOKS(あるいは漫画版)のいなだ詩穂が描いたものを元にデザインされているので、近いものを見たい場合は本のイラストレーターが誰なのかを確認してから買ってみてもいいかもしれない。
改稿されて一部の設定が変更されているので、特に迷いがなければ最も新しい刊行先である角川文庫版を購入するべきだろうか。

アニメの尺の取り方、特徴的なオープニングとエンディング

アニメは改題されたゴーストハントの名で放送されており、原作1~6巻(漫画版だと1~9巻)までの内容を2クール構成で作られた作品である。
原作7巻(漫画版10~12巻)で完結しているので、どうにか最終巻まで収まっていればひとつの作品として話の流れは完璧だったかもしれない。
もしかしたらアニメで続きが気になった人は最終巻を買ってほしいという狙いがあったのだろうか。
実は、最終章のラスト2巻分の内容は限定版でドラマCDとなっている。
それと、2クール(全25話)で6巻までの内容をいれるにあたって、各エピソードに2~4話分の尺が用意されている(第11話のみ単発エピソード)。
昔のアニメらしい尺の取り方であり、同時に長くとったおかげでじっくり描写されている。
したがって、ぶつ切りになっている、展開が異様に駆け足だというマイナスを感じにくく、視聴したときの満足度はかなり高い。
付け加えて、このアニメはオープニングとエンディングは両方ともインスト曲
どちらの映像もキャラクターすら一切登場しない。アニメでこれは相当珍しいパターンである。
オープニングのコーラスも歌詞のないヴォカリーズに近いもので、一切雑味のなくいっそ清々しさすら感じるほどの出来栄えである。
唯一の変更点は第14話からオープニング映像、15話からエンディング映像が変わったくらいで、それ以外の要素は大体同じもの。
制作スタッフはそこそこ楽が出来てよかっただろうと勝手に邪推してしまった。

オープニングは静かな立ち上がりから光の玉が飛び交い、色を変えつつ曲調も焦燥感を煽るように変化していく。
一方、エンディングは光の玉が明け方(夕暮れ?)の空へのぼっていくだけ。
中盤での映像変更時、オープニングはどこかを走っているような演出などが足されている。
それとエンディングは光の玉が映るだけに変わっているなどの変更がなされた。
エンディングの曲は静かで落ち着いたものになっており、これは恐怖を煽られてから本編を見ていた視聴者のざわつく心を、エンディングの優しい曲で落ち着かせるというひとつの流れを想定して作られているのだろう。
あくまで怖さはここでおしまい、深夜放送だからこのままお休みなさいといったところか。
番組ひとつでここまできれいにまとまっていると感じられるのは、今でもも相当珍しいと思っている。
ただ次回予告はホラーを全面に押し出す曲にしたせいで、一息ついて落ち着いたと思えば突き落とされて、その落差から怖いまま終わってしまう。ジェットコースターばりの緩急の付け方だ。
オープニングやエンディングは本編と関係ないのでつい飛ばしがちになるものだが、この作りの上手さによって最後まで映像を飛ばすことができなかった。
ぜひ見たことをない人、あるいは飛ばしていた人がいたなら通しで見てみるべきだ。
引き算の美学が垣間見えるとはこのことだろうかと思えるほど完成度は高いと思う。

次回予告もオープニングと同様、怖めのBGMと麻衣が次のサブタイトルをコールするだけのどシンプルさ。
ここで麻衣がコールした#は本来ナンバーというのだが、今作はシャープと呼称していた。
このシャープ読みは本当に最初だけで、3話終了後の次回予告(人形の家#1)では#の部分を第◯話と喋るようになる。おまけに、配信サイト(筆者は2つの配信サービスで確認した)では第1話の次回予告の時点で#の読み方が第◯話に修正・統一されてしまった
もしかしたらシャープ読みを聞いたことがある人は、当時のテレビ放送を録画していたか、あるいはその時発売されていたメディアを購入しただけかもしれない。
どちらにしてもレアである。

ゴーストハンターたち

話の流れは以下のものになる。

  • 依頼を受けて、ナル達が現地へ行って調査拠点(ベース)を構築する
  • 聞き込みや機材に依る調査を行って情報収集する
  • 怪異が起きて誰かがピンチになる(ヒロイン扱いを受けるのは当然麻衣か真砂子)
  • 正体を掴んだ場合は除霊・浄霊・撤退のいずれかを行う
  • その後のちょっとした話


大体は怪異(あるいは現象を発生させている人)を倒して(説得して)終わることが多い。
どうしようもないやつが出てきてしまって、一時的撃退をして逃げ出し調査終了になることも(血ぬられた迷宮が該当)。

時代設定は現代日本、年数はアニメだと第16話「禁じられた遊び#3」の冒頭、麻衣が夢の中で死者となってしまった人物の部屋にあった定期券を手に取る場面で、定期には11.10-8と記載されていることから2011年か。
しかし、このエピソードがあるであろう悪霊シリーズが発刊されたのは1990年。漫画版なら2000年のなかよし3~10月号に連載されていた。したがって2011年だったとしてもスマホは一切登場していない(前述したがアニメ放送年の翌年1月にiPhoneが初めて世界に発表されている)。
別にこの作品に限らず、少し未来の現代世界を舞台にしたときの技術革新の程度によって多少齟齬が出てしまうのは創作ではよくあることだ。むしろ、未来のこの国はこれくらい発展しているだろうといった、制作者側のイメージが分かる場合もあるので楽しめる部分でもある。

合理的な構成


ホラー作品において霊能力者の存在は絶対である。古今東西、怪異を調べるために多くの霊能力者が謎を解いたり、悪霊と戦ったりしている。
ゴーストハントも例外なく霊能力者がそれらと対峙するが、珍しい点はまず機械を用いて調べるところだ。
素人意見になるが、ホラー系は現地か本人の自宅で心霊現象を調べるときに身一つで行っているイメージが強い。
カメラを使って撮影はするが、温度を測るサーモグラフィや土地、建物の高さや間取りをPCに取り込んで3D化し、立体的に調べ上げていくのは目新しさを覚える。
カメラのデータをビデオと呼称してカセットテープを回収する作業があるのは、作品が作られた時代を考えれば妥当である。
そして回収するために人を差し向けなくてはならないというひと手間が、ヒロインの麻衣をピンチに陥らせる絶好の機会になりうる。
多くの機材を仕掛ける関係で人手が欲しいから、ナルは麻衣をSPR(ナルたちの組織)に引き入れたのだ。仕掛ける数が多いなら回収の手間もまた多い。
つまり非常に合理的な思考のもとで設定が作られており、視聴者側からして麻衣が単独行動する理由付けを納得しやすくなっている。
単に彼女の性格だけでなく、仕事の都合でそうしてしまえば仕方なくなる上に、麻衣に限らず標的になりやすい真砂子を怪異に襲わせるための状況すら容易に提供できる。
特にSPRのメインメンバーの内、幽霊が見えるのは真砂子のみであり、おまけに浄霊も可能なので敵側の視点なら脅威でしかない。
また、物語開始直後は何も出来ない無能枠としてその座を守ってききた主人公の麻衣も、次第に様々な能力を開花していくことで超能力者の立場へ移り変わっていく。
彼女は生来の直感の鋭さに加えて、透視、過去視、幽体離脱(体外離脱?)を会得していった。
その上、滝川のぼーさんからマントラ、巫女の松崎から九字切りを学ぶと、威力は低いものの生者に怪我をさせる程度の才能を発揮している。霊体には弱いものなら一時的撃退が可能なときもある。
さすがに少女向けであること、ミステリ要素もあることから麻衣がなろう系よろしく無双をするようなホラー作品にあるまじき下品な展開にならないので安心したい。
むしろ、なまじ力があるせいで余計に突っ走ってトラブルを起こすようになってしまう。
そして怪異はおよそ強いものが多いので、麻衣の付け焼き刃の能力では対抗しきれず敗北する。
つまり明らかにフィジカルは弱いが謎解きに有能な麻衣・真砂子の両名を無力化しようとするのは、話の組み立て方として非常に妥当な見解である。
少女向けの文庫から発刊されている背景もあって、ヒロインがピンチのときに男性陣が格好良く助け出してくれるシチュエーションの為にも、彼女たちに降りかかる危機は必要不可欠なのだ。

同じく女性である巫女(シャーマン)の松崎はヒロイン枠ではなく、頼れる姉の枠にいるのでピンチになるシーンが思い出せないくらいにはダメージを負わない。敵を倒せないがやられることもないのは、それはそれでタフと評価できるか。
普段の除霊能力は滝川、ジョン、真砂子たちと比較すると明らかに低すぎて、半分くらいいらない子扱いされる節がある。
しかし、防御面ではそれなりに活躍しており、麻衣の同性のメンタルケア要員としてかなり重要な位置にいる。
麻衣が失敗したとき、あるいは怖い目にあったときに慰めてくれるのはぼーさんか松崎のどちらかがほとんど。
同性でも歳が近い上にナル関連でライバルのようだった真砂子には上手く甘えられないが、年上で包容力のある松崎なら麻衣を受け止めてあげられるほどの地力があるのだ。
SPRに集う面々を家族のように感じている麻衣にとって、まさに安心して頼れるお姉ちゃん枠である。そういった扱いを嫌っていないのも、松崎が世話好きで善良な人間だと伺えるだろう。

確かに松崎の本領を発揮するには条件がかなり厳しいものの、ぴたりとはまった場合の浄霊力はトップクラスである。
原作6巻(アニメだと22~最終話の呪いの家のエピソード)において、ナルは倒れてしまってぼーさんがいつも以上に酷使されてしまうほどのピンチな状況で、これまで今ひとつだった松崎が見せた浄霊の儀式はまさに一撃必殺といえるレベルの凄まじいものだった。
目立った活躍ができず長らく不遇だったが故に、真の実力が披露されたときには驚いたものである。
ただし、「このキャラってまともに浄霊できるのか。いつも中途半端だったくせに」といった驚きだったが。
ナルが松崎の同行を許していたことから、最低限の才能はあると見込んでいたのは間違いない。
だが悲しいかな、他のキャラクターを持ち上げるための踏み台になっている印象が強く残っているのだ。
半端な退魔の仕事ぶりが多いせいで、麻衣のケア要員としての役割が主だってくる。
松崎だけに限らないが、SPRに集ってくる霊能者は全員何らかの癖があり、外面をうまく取り繕っていたり、そもそも戒律をぶっちぎってきたりと中々な連中。
それでも自称霊能者と違って確かな実力は持っているし、詐欺師のような自称どもを嫌っている。
依頼料に見合った仕事をしているところが、有能な人物としてナルが利用(協力)したい点なのだろう。リンだけでは手が回らない事態もぼーさん達がいればカバーはきくし、全くの素人は麻衣と途中参加した頭が非常に良い安原少年くらい。そしてどちらも無能ではないので、内心使える札が多いのは彼自身の心の余裕を持てる条件に繋がってくる。
何より、麻衣の人柄の良さが周囲の良い人を集めている。感情移入しやすいせいでいらないトラブルを招きがちだが、彼女の人の良さがちょっとした救いに繋がっている。

さいごに

アニメは全編通して1エピソードに割いた尺のおかげで非常に丁寧なつくりをしている。
しかし、これでも原作からカットされた要素がそれなりにあり、原作を知っている人からすると残念に思えてしまうものもあるらしい。
生憎、筆者はアニメしか知らないのでカットされた部分がどこかはわからないものの、話が唐突にぶった切られたような感覚はなかったので問題はないだろう。
特別編としてラストエピソードを何らかの形で映像化してほしかったのは言うまでもない。
気になるならドラマCDを購入か、読書が好きならブックオフなど中古屋で原作小説を買ってみるのも手かもしれない。

「ゴーストハント」の関連商品はこちらから。
https://amzn.to/3PcOSC1
https://amzn.to/4r691XW
https://amzn.to/46Dk3fR


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次