レビュー:本音を隠して歌い続ける青春と恋、覆面系ノイズ

引用:http://fukumenkei-anime.jp/
© 福山リョウコ・白泉社/アニメ「覆面系ノイズ」製作委員会
目次

概要

歌うことが大好きなニノは、幼い頃に2つの別れを経験した。
初恋の相手のモモと、浜辺で曲作りをするニズ。
彼らと再び会うことを願いながら毎日歌い続け、高校生になったニノはついに再会を果たす。
モモは複雑な環境、心境からニノを拒絶したが、ニノは諦めない。
ニノはユズの誘いに乗って、彼のバンド「in No hurry to shout(イノハリ)」のボーカルとなった。
自分の歌声でモモをもう1度振り向かせてみせると意気込みながら。
モモは作曲家として既にキャリアを掴んでいたが、夜逃げして息子に金をたかり続ける母親の存在、ニノへ作った曲を生活のために売り払ったことを後悔していた。
そのニノがいつの間にかイノハリのボーカルになって歌っているのを見て驚愕する。
そしてモモは作曲家を続けながら、イノハリのライバルバンド「黒猫 (SILENT BLACK KITTY)」のベースを担当する。
これは、単方向で絡み合う恋と音楽の物語である。

隠し事ばかり

覆面系ノイズは公式サイトの画像や劇中のセリフ、サブタイトルですら心を隠していると明示している。
本当の心と書かれているが、わかりやすいのは感情の好き嫌いだろう。
主人公のニノは初恋相手のモモが好き。
幼少期に逢ったユズ、幼馴染のモモはどちらもニノが好き。
元イノハリのゴーストボーカルで黒猫のボーカルに移籍した深桜はユズが好き。
その深桜を好きなのはイノハリの一員の佳斗。
彼らは物語の開始時では双方向に気持ちが向いておらず、その時々の状況にあわせて方向を歪ませている。

自分だって好きなのに、見てくれないから去る。
眼の前の人が好きだけど、その人は別の人を思っているから手助けしてしまう。
そういった人間関係でしばしば見受けられる友情や恋の揺れ動きに、どれだけ感情移入できるかが楽しめるポイントになる。
バンド活動、恋愛の行方は近い位置にあって並走している印象があった。
まだ年若い子どもたちの荒削りな生き方を見て、かつての自分を思い出してみてもいいだろう。

制作年が古めのためか携帯電話はスマートフォンを使っているのに、音楽を聞く時は音楽プレイヤーを使っていた。
ヘッドホンを使っているから耳から外すとかなり音漏れしている。
さらに電車でしまおうとしたらプラグが抜けて、音が丸聞こえになったときは往時の懐かしさを覚えた。
内蔵スピーカーがある製品は丸聞こえになったものだ。
それにイノハリの事務所(スタジオ?)でユズの作った曲を聞いた場面。
あそこで音楽プレイヤーをドックスピーカー(プレイヤーを接続して使う台座付きのスピーカー)と併用するのも時代を感じる。
携帯電話が多機能、高性能化したことで携帯音楽プレイヤーの座は脅かされた。
学生たちがこぞって持っていたウォークマンやiPodは姿を消したが、今も音楽プレイヤー自体は販売されている。

ニノを許容できるかどうかにかかっている

ニノは鈍感と説明されている。これが結構酷いと思うときもある。
少なくともユズの恋愛的な感情の動かし方は、他のメンバーから見ても相当わかりやすい。
感情の中身が恋愛と知らずとも、明らかにニノに関する行動が他と比較して露骨なまでに違うのだ。
ニノのことになると行動的になったり、年々書けなかった作曲が捗ったりする。
不調だった腕前の改善した理由がニノだと誰だって気づく。
だから深桜はイノハリを去ったのだ。

しかし、熱い感情を向けられているニノは一切気にしていないどころか気づいていない。
あくまでユズは好きな曲を作ってくれる幼い頃からの友達。その程度からだった。
ユズがニノと2人で会話しているのにも関わらず、ニノの話題にはモモの影がちらつく。
良いこと悪いことをユズに聞いてほしくて彼に駆け寄るまでは理解できるが、会話内容が別の男のことを延々と話してくるのだ。
ユズの精神的負荷が高まるのは言うまでもない。

ただユズの曲が大好きで、ユズの曲で歌いたいとはっきり告げているのが話をややこしくする。
モモ一辺倒なら諦めがつくものを、ある点ではモモよりユズ(自分)を求めているのだ。
釣った魚に餌を不定期に投げ込んでくるのだから、魚としては複雑だ。
どちらにも気があるような仕草で2人の男を惑わしているのだから、そこだけ取り上げたらニノは不誠実な人間である。
深桜や佳斗が苛立ったのも頷ける話だ。

その手のやり取りは少女漫画ならありふれたもの。現実でも見られる展開。
オーソドックスな物語の動かし方に読み慣れない読者は、特定のキャラクターに関心を寄せてみるべきかもしれない。
この作品ならニノではなく、ユズかモモ。あるいは少し外して佳斗や深桜。
それでもきついなら入れ込まず薄く広く見てもよい。後ろの観客席から舞台全体を見下ろすイメージで。
筆者はニノの態度が定まらないせいで、被害者がいつまでもニノからすぱっと離れられないことにやきもきしていた。
だからユズかモモ、画面内に登場するどちらかに焦点を当てようと努力する羽目になってしまった。

ニノの行動が(フィクション故に)突飛なので理解しがたいところも多いのだ。
意味もなく喚く、他人の話をガン無視して都合よく話を変えたり情報収集したりする。
激情を抑えきれず、歌うことでストレスといった負のエネルギーを外へ叩きつけるのは他作品の主人公も行う。
ただし、ニノは他人へ言葉をもって説明することを放棄しているようにも思えてしまう。
例えば「ガールズバンドクライ」の仁菜なら、間違っていないことの証明や正しさの押し付けをする。
「ロックは淑女の嗜みでして」のりりさなら、御託はいいから私たちの曲を聴けという激情で殴ってくる。

そういった激しさのようなものを、ニノから感じられない。
彼女は場当たり的な動きで、周囲へ傷をつけに行っている印象が拭えない。
話の都合といわれたらそこまでだが、ボーカルオーディションの書類審査が謎だった。
録音機材がスマホ、録音場所が海の近くでゴミと分かっているのに、歌声は光るものがあるからといって審査を通すのはいかがなものか。
それで最終審査の内容は明かされていないが、いきなりニノが歌った行為に審査員が疑問を投げなかったので自由アピールの場だったと推測できる。
そこで(モモが聞いてくれればどうでもいいから)落ちること前提できらきら星を歌うのは、審査する側にとってまあまあ喧嘩を売りに行ったと感じた。
実際、きらきら星を歌ったことで審査員の顔は困惑していた。

結局モモはその場にいて失格を告げたのでニノは落ちたわけだが、ニノの目的は果たしている。
だからある程度は納得して、今度はイノハリのボーカルになって中継で生の感情をごりごり乗せて叫んだ。
何というべきか、ある意味でロックともいえる。悪い方向に、の但し書きを添えるのも忘れずに。
正直、学校のステージとテレビ生中継のどちらも歌うというより喚き散らしていた。
あれを素晴らしいパフォーマンスといえるか分からない。筆者はド三流だと思った。
ニノが凄いのではない。ユズをはじめ後ろの演奏メンバーが好き勝手暴れるニノのフォローを終始してくれたおかげなのだ。

終了後、ニノは歌わせてくれたことを皆に感謝していたのでそこまで不快感はなかった。
ここでただ歌えて良かったなどと笑顔で何か言っていたら、視聴するガッツは大分失せていたことだろう。
ニノだけが画面にいて何かをすればするほどキツいので、ユズかモモなど別キャラクターが常に画面やシーンに登場してほしい。
それとモモが動揺して傷をつけたギターを、久瀬経由でニノが受け取ったあの場面。
バンド作品のおける人気の展開なのだろうか。
ボーカルで入った主人公がギターを入手してギターボーカルにコンバートするのは。

序盤の出し方は格好良かった

第1話のタイトルロゴの出し方、6話までのオープニングの見せ方は格好良かった。
アバンタイトルのように前回のライブシーンを流用して、テロップを乗せた。
タイトルロゴの見せ方は第1話だけでなく、その後のエピソードでも良い。
オープニング中だけ見せず、あえてAパート内でスタイリッシュに見せてきたのはかなり珍しい。
他で見なかったので挑戦的なやり方である。それがきっちり格好良く見えたのだから成功だ。

序盤は特に視聴者が続きを見てくれるか切ってしまうかの分かれ道。
最終回が良い出来になって満足感を得つつ終わってくれるのは、視聴者は当たり前と思っている。
そして最終回まで視聴することを習慣化させてしまえば、多少道中がガバガバでも流してくれる。
故にスタートでコケるのは避けたい。
いくら後ろになるほど上出来でも、見向きもされなければ無いものと変わらないからだ。

その点、これは序盤のロゴやオープニングで他の作品とは違う珍しい形を出した。
目新しさ、違和感なく出せたことはプラス要素になるし、そのプラスをもって続きを見てくれれば有り難い。
このあたりは作戦勝ちと思えた。
次を見るモチベーションの足しになったし、マイナス(ニノの酷さ)を流すための材料に少しは貢献していると思われる。

さいごに

所々少女漫画らしい繊細さ、男女の妙な距離感の近さが表現される。
またニノの行動に許容の心を示せるか、ユズやモモの方に感情移入できるかで視聴継続の可否が決まるとみて良い。
音楽系の作品なので流石にバンドシーンは力が入っている。
ここだけをピックアップして楽しむのが、実は最もストレスなく美味しいところだけを味わえるのかもしれない。

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