レビュー:一念岩をも通す最弱の剣客、落第騎士の英雄譚

引用:https://www.ittoshura.com/
©海空りく・SBクリエイティブ/落第騎士の英雄譚製作委員会
目次

概要

己の魂を武器に変えて戦う現代の魔法使いはブレイザーと呼ばれ、ブレイザーの養成学校である破軍学園に通う黒鉄一輝はその能力の低さから留年してしまった。
生徒たちから落第騎士(ワーストワン)と蔑まれているが、彼は毎日地道なトレーニングと勉学に打ち込む。
ある日、異国からやってきた編入生のステラ・ヴァーミリオンの半裸を偶然見てしまった一輝は決闘を挑まれた。
下馬評ではこき下ろされていた一輝は周囲の予想を跳ね除け勝利する。
決闘の約束通り、ステラは一輝の下僕として彼の同居人となり、多くの剣客との切磋琢磨の中で、互いに惹かれていく。

細かいことは多分どうでもいい

魔法ありのファンタジーのアクションなので、魔力は当然のようにあるものとされている。
さらに独自の用語が最初から最後までずっと出てくる。
例えば、自分の霊を何らかの道具に変換して戦いに挑む人間を伐刀者(ブレイザー)、魔法的要素によって作り上げる固有霊装(デバイス)、それを媒介にして発動する能力を伐刀絶技(ノウブルアーツ)といったように。
しかし、全くこれらの単語を理解する必要はない。
考察する必要がないのだ。そこまで重厚な設定を噛み締めて考察する作品とは思えない。
落第騎士は戦うことに力を注いでいる。
とにかく強いやつが強いやつと戦うことを楽しみに見ればそれで十分なのだ。
この作品はスクライドから影響を受けているといわれている。
だからなのか、オープニングや挿入歌は酒井ミキオが担当している。
特にオープニングはグレースケールに赤の差し色を混ぜて、物語の進行に合わせて適宜映像が変わっている。
スタイリッシュさを捨ててストレートに熱さだけ勝負にいくのは、スクライドらしさを確かに感じられる。
一輝の生家である黒鉄家の圧力によって、様々な嫌がらせが一輝本人へ降り掛かっている。
騎士として生きるために学園に入ったが、試験内容が一輝の才能が劣っている項目にターゲットを絞られているせいで評価が地の底に固定されてしまう。
物語の開始時点で1年分の時間を無駄にさせられ、理事長の代替えがなければこのまま終わるレベルの非道さである。
1年のビハインドを腐って過ごさず、毎日地道な努力を重ねていた彼の鍛錬は無駄にならなかった。
ほぼ純粋に身体能力だけで強大な魔力を操る強敵たちと互角以上の戦いをするのだから、弱者の星として支持されていく。
ストーリーは1クールでキリの良い区切りである、七星剣武祭の代表メンバーの選抜戦終了まで。
途中で登場した倉敷蔵人との決着など、気になる再戦カードなどは残念ながらアニメ本編では描かれなかったので、気になる人は原作を買って読み進めるしかないところが難点か。

剣士としての生き様

落第騎士は箸休めとして、ステラメインの回が2つと妹の珠雫メイン回が1つある。
ステラの回は一輝とのラブコメで、珠雫なら次話からスポットライトを当てる最後の強敵の東堂の実力を見せつけるバトルだ。
残りはそれぞれの一連のエピソードをいくつかの話数に分けて放送された。
落ちこぼれが日の目を浴びて成り上がる「落第騎士」、剣士としての心を示す「剣士殺し」、七星剣武祭の切符を得る後半戦の「無冠の剣王」といった具合である。
ここで特に筆者が気に入っている対戦は3つ。
第7~8話「剣士殺し」のエピソードで戦った対綾辻、対倉敷戦。
そして最終話の「無冠の剣王」の対東堂戦である。

綾辻一刀流

剣士殺し編は倉敷によって父が病に伏せ、道場を失ってしまった綾辻が一輝へ卑劣な罠を仕掛けて勝利を得ようとする所から、道場跡で倉敷と戦う姿を見せて剣に生きる人の心とは何かを教えた話だ。
綾辻はプライドを捨ててでも勝利を欲するあまり、道を見失ってしまう。
一輝が唯一の魔力による一時的なブーストである一刀修羅を事前に無駄打ちさせることで戦力を削り、試合会場に罠を仕込んでおくことでより勝率を高める念の入れようだった。
一輝は無駄打ちされた時点で彼女の目論見を読み切っていて、事前に不正の事実はあるけどジャッジキルしないでほしいと先生にお願いしている。
そうして始まった試合では当然仕掛けられた策略で不利に陥るが、一輝は負けてしまうような窮地ではなかった。
まだ落第騎士編の森を形成してスニークアタックする男との戦いの方が不利だったまである。
綾辻が一輝を倒せなかった理由は、正道から道を踏み外してしまった彼女自身の心の迷いが腕を鈍らせていたから。
僅かな間でも一輝から教えられてきた鍛錬、これまで自分の家の流派の修行で積み上げたものすら上手く活かせず、闇雲に力を振るっていただけだったのだ。
それでは常に己を律して鍛え続けていた一輝には届かない。
彼女は勝負に負け、ただの一撃で膝を地につけた。
しかも一輝は攻撃の当たる瞬間に武装を解除したことで、出血すら与えないよう配慮されるほどの手加減ぶり。
綾辻は莫迦にされたと激昂したが、誇りなき戦いに意味はないと切り捨てた一輝の言葉が重くのしかかる。
悪に染まれず、自分の誇った剣すら捨てきれない。綾辻は半端な自分を責めた。
一輝は友達である綾辻を助けたいと思ったから手を差し伸べる。助けるには彼女からの一言がどうしても欲しかった。
ここで涙に頬を濡らしながら助けを求める彼女の姿は、次話の真意に気づくシーンと合わせて声優の熱演が素晴らしかった。あの演技があったからこそぐっとくるのだ。

剣士の考え方

次話で倉敷と戦う一輝の様子を見て、剣士として何を考えていたのか気付いたステラと誤解していた綾辻。
この違いが剣客として生きる違いで、一輝とステラという最上位の実力者と比べて綾辻が遠く及ばない人間という境がくっきりと現れた場面だった。
それでも綾辻が全く無能ではない。及ばない実力であったとしても、父の教えを実直に守り、寸分たがわぬよう磨いてきた努力の決勝は無駄にならなかった。
倉敷が2年もの間、道場をいたずらに破壊していたのではない。自分が憧れていた男の技を知りたくて待っていたのだ。
その望みを一輝が叶えてくれたから道場から去ったのだ。
あれは勝ち負けではなく満足したから出ていっただけで、両者の実力はあの時点だと拮抗していたように見受けられる。
一輝が倉敷に見せた技は綾辻の父が最後に見せようとした技であり、綾辻には自信がなかったものの、技そのものは完璧に習得していたのだ。
年もの間縛っていたものから解放されたことで、綾辻はもう一度剣士として恥じない生き方をすること宣言し、自らの不正を報告して選抜戦から消えていった。
魔力によるファンタジー要素があるものの、一輝が戦うときは魔法うんぬんよりも純粋な剣の戦いになっているのが大半である。
したがって魔法的な記号を探すより、彼らの超人的な反応速度や現実離れした謎の剣戟を見ていた方が楽しめるのはそういった理由がある。

一撃必殺

最後のエピソードである無冠の剣王は、一輝が黒鉄家の陰謀で拘束、監禁されてしまう。
一輝を勝たせないように、大人たちは毎日長時間の聴取と施設内で選抜戦を行わせる。
連日続く終わりのない苦痛に一輝の精神は蝕まれていき、徐々に追い詰められていく。
どうにかするべく学園側も動き、最後の決勝戦は学園内のアリーナで行うよう計らったが、空には中継ヘリが飛んで生放送をさせるよう交換条件を出される。
さらに時間になっても来ないなら規定通り不戦敗にするとして、彼らは一輝を送迎せずそのまま野に放ったのだ。
一輝はあまりに過酷な責めで精神が半ば病み、幻覚を見ながら虚ろな目で走り続ける。
暗く、吹雪く幻覚の中、落ちかけた心が諦めさせようと囁いてくる。
胸の内から燃え上がり、赤く広がる空間へ手を伸ばす一輝は、気づくと学園の校舎前にいた。
仲間たちから励まされる中、ステラは高々と掲げた金メダル。
一輝はステラとの約束を思い出し、ついにメンタルを完全回復させる。

会場入りして対峙する2人。
既に体力が底をついている一輝にとって、実力差もあって1分間の全力すら勝ち目が薄い。
だから1分ではなく、ただ一振りの斬撃で決着をつける。
決勝戦で開幕全開で力を解放し、真っ向勝負を仕掛けた。
2度目の挿入歌はオープニングで、少年漫画の王道演出で決着をつけた。
最終話までくればオープニングも聞き慣れたところ、ベタだろうが熱さのある曲をかければ盛り上がるのは当然なのだ。
そし話数を増すごとに戦闘時間が短くなっている。
決勝戦の東堂は1分どころではなく1回の交差で終わった。
これは実力が上がるにつれて、常人では理解できないほどのやり取りがあると思わせる効果を狙ってのことか。
単に試合後の恋愛要素を含め会話シーンを尺の中に入れたいがために試合時間を極端に短くして畳んだ可能性も高い。
一輝が責め苦を味わっていたことで体力が限界だったこと、実力差を埋めるには一刀修羅では足りなかった。
長々と描写したところで延々と一輝が不利になる光景を描く程度なら、さっさと締めくくったほうが爽快さに勝るのは言うまでもない。

さいごに

オープニングが格好良いものだったが、エンディングは嗜好が合わなかったのか、どうにも浮いていると感じた。
これならいたずらに耽美的な雰囲気の映像や曲にするべきではなかったと思う。
オープニングは飛ばせなかったが、エンディングは毎回飛ばしていたくらいである。
今は次回予告の映像は無いことがほとんどだ。
公式サイトや動画サイトで別途、次回予告映像があるパターンもそれなりにあるが、わざわざそのようなページに飛んでまで見たいと思わない。
次回予告は本編のすぐ後ろにあるから予告なのだ。別に用意されたものなど、特典映像やCMと何が違うというのか。
相変わらず日本のアニメで主役が握るのは日本刀だなと思う方々は、一度見てみてはいかがだろうか。

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