レビュー:奇跡は降り積もる雪のように、Kanon

引用:https://www.toei-anim.co.jp/tv/kanon/index.html
https://www.tbs.co.jp/anime/kanon/index-j.html
(c)VisualArt’s/Key/東映アニメーション
©VisualArt’s/Key/百花屋
この記事の要約

「Kanon」は2002年の東映版と2006年の京アニ版で2度アニメ化されており、作画や構成、主演声優の一部に大きな違いがある。

東映版は放送スケジュールの乱れや独特のキャラデザで賛否両論だが、1クールで物語を凝縮し、特典回など評価すべきところもある。

Key作品特有の理屈を超えた奇跡による解決を受け入れられるかが、本作を楽しむ鍵となる。

目次

概要

1999年の1月。
両親の海外赴任にともなって、叔母の水瀬家に居候することになった相沢祐一。
何度も訪れたはずの街なのに、小さな頃の記憶がほとんどなかった。
祐一は転入した高校で出会った少女たちと交流していき、徐々に記憶を取り戻していく。
何故記憶を失ってしまったのか、隠されている真実は何か。
雪降る街に、今もう1度奇跡が舞い降りようとしている。

2度作られた作品

アイキャッチとして冒頭に表示してある画像、左右のキャラデザがあまりに違いすぎているのは誰だって分かるだろう。
これは同じ作品が2回作られたことによる変化である。
同じものを2回と聞いて、少し古いが名作である「鋼の錬金術師」を思い出す人もいるだろう。
しかし「Kanon」はハガレンと違って、アニメ化のときには全て物語は完結している。
したがって、どこまで話を盛り込むか、制作スタジオはどこかなどの違いが出ているくらいだ。
アイキャッチ画像の右側が1回目の東映アニメーション制作、左側が2回目の京都アニメーション制作だ。

制作年は2002年の1~3月、2006年10月~2007年3月とそこそこ離れており、現実の月日が経過したことで本編の時代設定が古臭いものになっている。
悲しいかな、東映版はキャラデザの癖があるせいで批判されやすい。
鼻と口の位置が相当近くて顎の空間が大分広いのが原因だろう。
ホームベースみたいな顔の輪郭も中々のものである。
顔の輪郭については、「魔法少女まどか☆マギカ」でも似たような扱いを受けていたので、その辺りの美醜感覚はさほど変わりないことが伺える。

この顎が突き出したようなデザインについて擁護しておくと、元々原作のキャラクターイラストがそうなっているのだ。
PS2版ではなくドリキャス版のパッケージを見るか、ゲーム本編のスチルを見れば誇張無しだと納得できるはず。
樋上いたるの癖強い絵柄を上手く表現しているのだ。
決して東映がいい加減な仕事をしたわけではない。
京アニ版は、放送当時の京アニ制作の作品らしいタッチになっている。
こちらは見慣れていると思う人も多いかもしれない。

声優は主人公とサブキャラの生徒会長が変わっているくらい。
筆者の好みを言うのなら、祐一の声は2作目の杉田智和より、1作目の私市淳が好み。
その理由は、2006年4月にラノベや深夜アニメに衝撃を与えた「涼宮ハルヒの憂鬱」が放送されたからだ。
調べると多少共感してくれるだろう。
「ハルヒ」に出てくるキョンというキャラと、「Kanon」の祐一のデザインがどことなく近いのだ。
声優と制作スタジオが同じで性格も冷静なタイプ、おまけに同年の作品ともなれば似てくる部分も多少出てくる。
だから筆者は祐一が喋るたびに、どこかキョンの面影を感じて複雑な心境だった。
それなら昔レンタルビデオ屋で借りてみた、あの祐一の声の方が好きになるのは仕方ないだろう。

東映版は全13話+全巻購入特典の1話。京アニ版は全24話だ。
特に東映版の特典の14話は最終回後のエピソードであり、キャラクターのその後の成長などが描かれた重要な物語だった。
この話はDVD-BOXに収録されていないので注意したい。
京アニ版は話数が倍に増えたことで、前作以上に原作のエピソードを組み込めている。
デザインも現代寄りになって見やすくなっているし、オリジナルキャラとして祐一が好きだったお姉さんが登場する。

東映版が雑だったかと言われれば、少し違う気もする。
あれは1クール相当で1本のストーリーをなるべく綺麗にまとめようとしていた。
あゆと名雪のシナリオを軸に構成されていて、先述の特典の14話は名雪の成長が短いながらも綺麗に出ているので必見だろう。

実はかなりスペシャル放送していた


また、東映版の面白い話として取り上げたいのは、放送がかなりぐだついていたということ。
どうやら放送局事態の問題で放送休止など頻発したのが原因らしく、東映版はまともに1週1話の放送をしていない。
何と13話放送なのに、1話放送したのはたったの4回。
それ以外は2話連続放送。最終回にいたっては3話連続放送である。

地上デジタル放送開始前のごたごたとはいえ、いわゆるスペシャル放送を連発するのは珍しい。
後発の「藍より青し」なども似た事例があるらしい。
連続放送にともなって、次回予告も大分遊んだ内容になった。
「チャンネルはそのままで!」などコントのような掛け合いも多く、くすりと笑える作りだ。

このときの独特な次回予告はVHSには収録されている。
残念ながらDVDの方は確認が取れていないので分からないが、次回予告だけでも1度見てもらえたら面白さが伝わるはず。
深夜で2話連続放送、リアルタイムで見ようと夜ふかしていた人は楽しかっただろう。
Gコード予約などで週間単位の雑な設定をしていた場合、もしかしたら後半の部分が録画できていなかった可能性もあったかもしれないと考えれば、可哀想ともとれるが。

音楽について

1作目では、原作の「Last regrets」は最終話である13話のエンディングとして使われる程度だった。オープニング、エンディング曲共にアニメオリジナルである。
BGMも同様にほぼオリジナル、原作のものを使う時はわざわざアレンジして使うほど。
2作目は原作のオープニング、エンディングをそのまま採用している。
サブタイトルの付け方も2作目は音楽用語が添えられるこだわりがある。
意味があるかはわからなかった。

劇伴関係で問題のあるクオリティのものはなかったと記憶している。
そもそも美少女ゲームをアニメ化する、その初期の頃の作品だ。
それなりに成功や失敗が混在するカオスな出来栄えであったとしても、それすら歴史を感じられるスパイスとして許容できるものではないだろうか。

時代の古臭さ

元のゲームが制作されたのは1999年と最早サブカルではそろそろ博物館に行けそうな古さである。
それをアニメ化したのだから、当然時代設定も古い。
リメイクが放送されてからさらに時間がたったので、今からこれを見ようとすれば、それなりにギャップを感じながら視聴していくしかないのが正直な話である。
クラシカルな作品になるほど、どうしても時代のズレによる違和感が強く起きてしまう。
そのときならセーフだったものが後にアウトへ変わるように、世俗の常識とて不変ではないのだ。

特にKey作品は最初期にあたる「Kanon」だけでなく、ずっと後の時代の作品ですらKey特有の悪癖が表出している。
とてもわかり易い部分でいえば、過度に見えるような突き放しの描写だろうか。
主人公の男友達で3枚目のキャラクターに対し、とにかくヒロインたちの当たりが強い。
冷たくあしらわれるなら可愛い方で、時に過剰とも言える暴力描写が発生する。
暴力と言ってもギャグパートでぼこぼこにされる程度だから、暴力の影響でそのキャラクターに悪影響が出ることはない。

ただし視聴者がそれを見てどう思うかは別問題だ。
Keyはこの悪癖がとても強く、00年代なら「CLANNAD」が該当する。
「Kanon」はまだ北川の扱いが少々雑程度だったし、1作目なら特別編を見ればそれなりに幸せな結末になったことも確認できる。
2作目だと北川の扱いがどうなったかイマイチ覚えていない。

時代が古いので連絡手段は限られているし、限られているからこそのドラマ性はあった。
それでも奇跡に頼るストーリー展開、超常的な力でハッピーエンドへの道が拓けるような演出は後の作品でも多用されている。
Key作品でアニメ化されている作品を1つでも完走していたら、この作品を見る価値基準が何も知らない人と大きく異なってしまう。

安易な奇跡を良しとするか否か。
最終的にもたらされる奇跡の要素を許容できなければ、はっきりいってKey作品を良作と思えることはないだろうと筆者は考える。
それくらい大きなウェイトを占めているのだ。
人間がどうこうできるものではない状況で、結末を最良のものに変えていくなら何が必要か。
行くところまで行ってしまったら、後はもうどうしようもないのだ。
それこそ奇跡と呼ばれるような、機械仕掛けの神をどこからともなく出現させる以外には。

メインストーリーには必ずまともな説明がつけられない要素、ギミックがつけられている。
それらを科学的に、再現可能な現代の何かで解決しようと考えるほど辛くなる。
物語の要素を考察することは本来楽しみ方の1つなので否定はできない。
それでも説明のしようがないものを延々と悩み、結果こんな後出し無理みたいになってしまうと、全てマイナス評価へ反転してしまうおそれがある。
そういった危うい面をいかに見なかったことにするか。
視聴者には、都合の良いスルー力を求められている部分がある。

さいごに

京アニ版なら配信されているが、東映版は京アニ版があるせいか配信されていないことがほとんどだ。
したがってレンタルビデオなどで視聴するしか無いが、VHSだと再生機器がない場合も多い。
幸いまだDVDならレンタルサイトにあることは確認しているので、東映版が見たい人はそちらから借りて見ることをおすすめする。
デザインがきつい人は、最初から京アニ版を見たほうがいいだろう。
合わないものを我慢して見るほど、苦行な楽しみ方もない。

「Kanon」は視聴手段が限られているがまだ見られるサイトはあるし、一部商品も辛うじて残っている。
気になる人は幾つか下記リンクで紹介している。1度見て考えても良いだろう。

https://amzn.to/4cfYHXP
https://amzn.to/4mISbxT
https://amzn.to/4vr52sh
https://amzn.to/4mpFNCF
https://amzn.to/47S0j8X



よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次