レビュー:重圧に耐える可愛らしきポンコツども。帝乃三姉妹は案外、チョロい。

引用:https://mikadono.family/
©ひらかわあや/小学館/アニプレックス
目次

概要

文武両道の天才と謳われた大女優の綾世昴。その息子の優は母の死後、知人に引き取られて天才たちが集う名門の才華学園に転校してきた。
そこには知人の娘で各方面に多大なる功績がある三姉妹の一輝、二琥、三和がいた。
優は彼女たちと家族になるために日々奮闘する。
三姉妹は普段ツンケンした態度をとったり平然と優をからかったりしていたが、内心は優のことを意識するあまりポンコツ化していくのだった。

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歪んだ親、歪んだ子供

天才の子供は天才である。そうとは限らないのは誰だって知っているだろう。
遺伝子が多少なり影響を及ぼすとはいえ、それぞれ生まれつきの向き不向きはあるものであり、環境次第である程度なら変わっていくのだ。
それを特定の方向に強引な矯正を行うのは心身に多大なる負荷をかけていき、最終的にどこか歪んだ人格形成につながってしまう原因となる可能性がある。
帝乃家はまさにその典型例であり、娘たちは確かに才能持ちだが歪みも比例して大きく感じられる。
高校生の身で大会や舞台で活躍している彼女たちの私生活は、ものの見事に崩壊しきっていた。
部屋は汚く、食生活は全員ばらばらかつ極度の偏食。
問題はそれらを無視してでも勝利や栄光を欲している親の教育方針だ。
本名すらまともに用意されていない端役程度の扱いのくせに、極端な実力主義者で自分の家の人間はすべからく天才でなければならないと妄執に取り憑かれている。
勝てなければ全てゴミだと言いかねない態度は優にも向けられており、天才の昴の息子なのにその体たらくは何だとばかりに攻撃的な言動を放っている。
子供の成長期に全く良い影響をもたらさない、いわゆる毒親によって娘たちの価値観はおかしくなってしまった。
それでも幼少期は比較的まともなコミュニケーション、思い出があったことは後に判明するのだが、どうしてそうも栄光に固執するのかはアニメで明かされなかった。

さて、それなら優の母親の昴は帝乃父と比べてどうかと見れば、こちらもまともではない。
仕事にかまけて息子の育児を半ば放置したために親子間は冷え気味。
自分が病気で入院してからようやく間違いに気づいて和解するがすぐに死亡した。
これのどこがまともな親だろうか。
優から見ても母親は偉大な女優だったが、そのせいで周りの人間からは母親の才覚、実績と比較され続けて嘲笑の的にされてきたのだ。
優には皆が褒め称えるようなわかりやすい才能は一切持ち合わせておらず、顔だけは遺伝で非常に整っている程度だった。
親の七光りで芸能界に送り込まれても演技の才能がないから即お払い箱となり、スポーツも学業も平凡なスコアしかないのでその道の大成も望めない。
勝手に幻想を抱かれて、勝手に幻滅されたと思えば影で罵倒されるなどいい迷惑である。
優が望んでそうなったわけではないのに、ただ母親が優秀だったが故に被った被害は誰に責任を問えばいいのか。

肝心の母親は病気にならなければ優とまともに関わろうとしなかった。
自分の仕事の忙しさとコミュニケーションの拙さから、息子の理解者にすらならなかった。
無能極まりないとはこのことだろう。
どちらの家の親も徹底して仕事面では優秀だが、ひとりの親としてはゴミ同然である。
何が悲しくて常に親の評価に怯えたり、親に半ば放置されたりしなければならないのか。
優たちが反抗的になって、反社会勢力の一員にならなかっただけマシだろう。
警察に補導されでもしたら経歴に傷がつくだろうから、まず何らかの形で手を打ってくるだろうが。

優の才能

そのようなゴミの家庭環境からゴミの家庭環境に飛び込んだ優は、母親の最後の言葉に従う形で一輝たち三姉妹と幸せな家族になろうと奮闘していく。
一輝たちの終わっている生活力のなさは優の数少ない特技である家事によって劇的に改善され、また偏食も管理栄養士顔負けの献立を毎日作る執念を見せている。
家事が特技になったのは昴が家庭を顧みなかった影響だったが、このような形で有効利用できているのは、果たして幸運だったかは何とも言いにくい。
さらに必要とあればホテルの予約、プランの構築も優がひとりで行っており、三姉妹のマネージャーとしてもかなりの有能ぶりを発揮する。
優の才能は最前線で活躍するものではなく、むしろ裏方で管理する方面で輝く類だった。

このバックアップによって一輝たちは今まで以上にパフォーマンスを発揮しやすくなり、新たな方向へ開拓できるようになる。
反面、優との関わりが深くなるほど優に対してある程度の依存が発生している。
そのため彼が関わったために逆効果になることもあった。
特に優のメンタル面は半ば狂人の域に達しており、周囲からの誹謗中傷にダメージを受けないし、失敗をそのままで終わらせず改善できるまでリトライし続ける根性もある。
時に自分の意見を曲げずに押し通して、他人が優の意見に合わせるという場面も出てくるほど。
彼は自分が傑物ではないと自己評価を下しているが、何者でもない奴が持てる精神性ではない。
ある意味異常者のメンタルを一輝たちもどこか恐れつつも評価している。
物語の都合でろくに触れられていないが、三姉妹の生活の手伝いを家事込みでしつつ、学生の本分たる勉強も忘れないのは超人だが、誰も正当な評価を下していないのは悲しいところ。

ホームラブコメなので

ラブコメなので当然、三姉妹が優に淡い恋心を抱くのは自然な流れだ。
ついでに優が三姉妹から飛んでくる恋心の矢印を気づいていないのも自明の理である。
初対面から冷めた始まりだった三姉妹との関わりだが、家事によるサポート以外で関係改善のきっかけとなったのは、間違いなく3女の三和のおかげだ。
一輝や二琥は練習のために帰りが不安定になりやすいが、三和は試合のとき以外は部屋(リビングか自室)でネット対局をするので接点が多くなりやすい。
実際、彼女たちが優のことを再評価して姉妹間の仲が深まった夜桜祭りのエピソードのきっかけは、三和が意図的に優へヒントを与えたからだ。
偶然写真を見つけた優がこれ幸いとばかりに夜桜祭りを使って家族間の関係改善に乗り出すのだが、全ては三和の手のひらの上だった。
夜桜祭りは三姉妹の懐かしい思い出。優がいなければ行くこともなかった。
同じ家に棲んでいるのに別居しているような生活。
三和はそうした生き方に風穴を開けてくれる人を望んでいたのかもしれない。

三和は頭脳面で天才故に他人との接し方に問題があって、教室でひとりだった。
彼女のエンディングテーマでもふたりの姉に甘えるような描写があることから、優が帝乃家に来たことを一番喜んでいるのは間違いないだろう。
三姉妹の個別エピソードでも、三和が最も遅く最終回までを担当している。
自分の失態を隠して猫カフェに行き、優との会話で涙を流してしまうあたりは、とてつもない程のヒロイン力を披露していた。

一輝はそもそも完成されすぎていて変化がしづらいように思える。
二琥は少女趣味が夜桜祭りで明かされ、先輩との試合の中を通して自分の好きなことと向き合えてしまった(自己完結の要素が強い)点がメインヒロインとしてマイナス気味だった。
だからこそ三和がひときわ目立ったのだ。
始めこそとっつきやすい攻略キャラと見せかけて、途中で挫折や回想を織り交ぜて弱さを見せる。
主人公に励まされ、姉たちからもエールをもらって逆転劇を巻き起こすなど、展開があまりにも主役だ。
アニメ版は明らかに三和へスポットライトが強く当てられている。初見でも容易に理解できてしまうほどに。

そしてもうひとつ、三和の話が最後になった理由が、残るヒロイン枠の矢乙女桜のせいだ。
三和との対局の後、お泊りする形で帝乃家へ遊びにきた桜だが、彼女の泊まりのエピソードを割けるだけの尺がなかった。
最後の僅かなカットでお泊りにきたことを喋らせて、今後のヒロインレースに彼女も登場するぞ、まだまだラブコメは終わらないぞと制作側が示したかった。
とはいえ桜のお泊り発言のシーンは30秒も尺を貰えなかった。
最後は三和が叫んで終わっているし、桜は1クールの犠牲者になったというしかない。
原作は二琥がメインヒロインの様相を呈しているとの話もあるので、三和はアニメという短い枠の中でもしっかり輝けたのは幸いだろうか。

さいごに

人によってはハーレムタイプのようなラブコメを苦手とするだろう。
しかし本作は三姉妹の扱いにかなりの差があるように見受けられたし、原作漫画とは違う比率でスポットライトを当てられている関係上、違った形で楽しめると考えられる。
特に三和の挫折が最も大きく描かれていたので、三和好きならぜひ視聴していただきたい。
この手の作品の真のヒロインとは主人公の男の子の方だという意見について、それを言ってはおしまいだと述べておきたい。

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