レビュー:女王陛下のプティアンジェは子供向け探偵アニメ!

引用:https://www.nippon-animation.co.jp/work/1279/
©NIPPON ANIMATION CO., LTD.

古いアニメだからと言って、観もせずに一蹴してしまうのは勿体ないこともある。

古今東西さまざまなアニメは生み出されてきたが、探偵アニメは比較的少ないジャンルだろう。

名探偵コナンや金田一少年の事件簿は有名だけど、ジャンル故に人が死んでばかりでショッキングな様を描かれやすい。
そこで、多少古くてもいいから子供向けはないかと考えた人はいないだろうか。

もっと明るく、そして悲壮感が漂わない探偵アニメを見たい方には、この女王陛下のプティアンジェは一考に値するものだろう。

目次

概要

19世紀中期のイギリスを舞台とした物語。消えたヴィクトリア女王の指輪の事件を解決した貴族の娘アンジェ・アイリントンは、その功績により女王からプティの称号と加護をペンダントと共に授かった。

アンジェは使用人フランク、スコットランドヤードの一員のマイケル刑事、ジャクソン警部と協力して、鋭い推理力と行動力をもってイギリス中の謎や事件へ挑んでいく。

人が死なない探偵もの

女王陛下のプティアンジェ(以下、本作)は全26話の2クール構成である。

全話通して本作において殺人事件は一切起きない。

さらに犯人役は多くが何かしらの事情を抱えているので、彼らが根っからの悪人とは(映像を見る限り)言い難い。

扱われる事件は窃盗であり、時々誘拐やハイジャックが発生する。

基本的な流れとして、何かの事件が起きて主人公のアンジェ、警察役のマイケル刑事、ジャクソン警部がその他のキャラクターと協力して捜査して解決するというものである。

本作は全て1話完結の物語なので、世界観やキャラクターの名前を知るために第1話だけ視聴しておけば、その後は(最終回を除いて)どこから視聴しても問題はない。

ジャンルとしては探偵にあたるべき本作であるものの、アンジェがコナンや金田一少年のような名推理を披露して事件解決していく作風ではない。

鋭い推理を見せるといってもあくまで低年齢の少女がメインターゲットである。したがって視聴者が頭を悩ませるような難解トリックはない。

また視聴者層を考慮して出血・暴力描写はない。

アンジェたちが現場に残された血痕を見て追跡する、銃をぶっ放して派手に戦うなんてことは起きない。

とにかくわかりやすく、楽しく見られるものが子供向けでは重要だ。

ただし、そこに必ずしも暴力やショッキングなものを突っ込む必要はない。

別に人が死なないならそんなもの面白くないという強烈な嗜好を、子どもたちの多くが有しているとは考えづらい。

人は死なずとも十分面白く見せることができる。

アンジェの勇気と行動に好感をもって視聴し続けるのは難しくないだろう。

彼女の性格は年相応のいたずらっ子、お転婆娘でありつつ、流石に貴族の娘からか一般教養は持ち合わせている。その割にまあまあ失礼な物言いをするのは未熟故か。

子供向けとは思えない重たい言葉

24話「オペラ・ハウスの怪人」のラストシーンで「これでいいんだわ。本当のことを知らないほうが、幸せになれる人だって、いてもいいんだわ」という、あまりに重たい締めを放った。本当に子供向けか一瞬悩む。

このセリフは何も24話に限ったものではなく、プティアンジェの全てのエピソードにかかってくる言葉に相違ないだろう。

犯人が家族、近しい関係者だったのは頻出しており、さらにアンジェ達の見逃しやごまかしによって事件そのものが雲散霧消してしまうケースも多い。

誰だって身内が悪事に手を染めていたら心苦しくなってしまうだろう。

この問題は本作の映像の中で描かれていない、その後の彼らの人生である。

上記の24話に焦点を当ててみれば、アンジェの友達のシェリー(画像左の少女)が主役欲しさに主役の座を射止めたエバを襲ったのではないかと疑われていた。

実際はシェリーが無罪であり、彼女の本当の父親のダグラスが犯人だった。

彼がマイケルたちに逮捕されて連行される際、娘の姿を見てから連行された。

シェリーは実の父親が真犯人だったとは気づいていないし、そもそも自分が養子のような形で生きていることを知らないのだ。

もしかしたら、いつか娘が今の家族では養子であること、実の父親が罪人だと知ってしまい、それについて大きく悩んでしまうかもしれない。

そうした中、解決してしまったアンジェ達が何らかのケアをするかについては一切語られない。

当然である。この作品は気軽に少女探偵アニメを見るために視聴しているのであって、被害者・加害者家族の今後などそもそもどうでもいいのだ。

とはいえ、アンジェが全く無知で短慮な性格・行動をしでかしてしまう愚かしい娘ではない。

誰かを思って涙し、罪を犯した相手にもまっすぐ見つめて更生を促す優しさや強さは併せ持っている。

やはり、犯人のその後を考えてしまうそのものが間違いなのだろう。ひとつの作品に対して意図を詰め込みすぎだ。

だから「これでいいんだわ。本当のことを知らないほうが、幸せになれる人だって、いてもいいんだわ」と締めくくるしかない。描かれていない以上、どうしようもないのだ。

比較的有能な警察

警察枠の二人の内、マイケル刑事はちゃんとアンジェをサポートして事件解決へ向かってくれる。

ハンサムかつ切れ者の彼をアンジェはとても信頼しており、劇中で彼女はマイケルに何らかのお願いをすることも多い。

しかしもう一人の警察であるジャクソン警部はだいたいお荷物である。

ただ喚いて場をかき乱すばかりで、実際ジャクソンはいらない子扱いされても仕方ない。

そもそも第1話の冒頭でアンジェは女王の加護が記されたペンダントを王室から賜っている以上、どこの事件現場に首を突っ込んでも文句が言われない立場なのだ。

ジャクソンから見て、アンジェはどこにでもしゃしゃり出る女の子。だが、鋭い推理力を披露するから排斥できない。

現場入りすると大人につまみ出されたり、正体を隠すために誰かの声を真似て喋るコナンと異なるところだろう。

子どもの目線で考えてみれば、ジャクソンは嫌な奴でマイケルはいい奴という簡単な比較ができる。

ジャクソンはコメディリリーフの役割を背負っているため役に立たないシーンが目立つものの、犯人をきっちり逮捕するシーンもそれなりにあるので実は全く無能ではない。

ジャクソンを有能に仕立て上げてしまった場合、アンジェの出る幕がなくなってしまう問題を防ぐために意図的な調整を受けているに過ぎない。

スコットランドヤードの警部である以上、能力は問題ないはずだ。

意外に体を張るアンジェの日々

ミステリーの一つに安楽椅子探偵というものがある。

様々な情報を色々なものや人から得ることで現場に赴かずして解決してしまうというものだ。

アンジェは安楽椅子に座ることなく、毎回色々な所に足を運んで事件に巻き込まれたり、挑んだりする。

行動力は目を見張るアンジェだが、身体能力はあくまで子どもの範疇に収まっている。

結果、大人である犯人に捕まってしまい、監禁、人質、脅迫などを受けることもしばしば起きてしまう。

ただしナイフや銃を突きつけられても彼女は心が折れず、反撃の機会を伺ったり交渉を持ちかけたりするガッツの持ち主である。

そして前話で窮地に陥ったとしても、次のエピソードにはフランクが街で仕入れた噂や情報を聞くやいなや、率先して現場へ突撃するほどのお転婆ぶり。

新しいもの、珍しいものにも関心が強く、ふらふらと引き寄せられるアンジェの自由人ぶりに、お祖母様の心労はいかばかりのものか。

インドに行った父と母がアンジェの下に帰ってくるのは最終回。

前話の次回予告において、お決まりのセリフ「アンジェにおまかせね」から「最終回よ」とさらっと流す程度。最後だからと特殊な変更はなかった模様。

ゾウの暴走がラストエピソードとなるものの、大した謎があるわけではない。

アンジェの父が次の警視総監になるかもしれないとジャクソンはぼやく。

軍人から警視総監になれるのかは筆者もわからない。

しかしアンジェとその父がイギリス王室に多大な貢献をこれからも続けるとなれば、いっそうアンジェの権力が増す点は見逃せない。

そうはいっても、アンジェは権力で他人をどうこうせず、これまで通りマイケルとジャクソンをパートナー扱いで巻き添えにして、毎日どこかの事件へ首を突っ込んでいくのは明白である。

彼女の両親には女探偵の件について内緒だとお祖母様と約束しているが、早晩バレて心労を増やす人員が増えるだけだ。哀れである。

アンジェは事件のためなら夜の張り込み、逃走する犯人を追いかける。

ところが、必死になって犯人の正体を暴いたとしても、犯人側の事情次第では平気で見逃すのだ。

犯人を見て見ぬふりをする、罪に対しての裁きを与えぬまま放置するのは探偵としてあるまじき行為だろう。

それと同じくらい犯人への赦しもするが、犯罪者の行く末を決めるのは司法(王室)であって、アンジェやマイケル達ではない。

マイケルやジャクソンも無罪放免に近いことを結構やっている。それはスコットランドヤードの一員としてどうなのだろうか。

勝手な行為に対して大元からの叱責がないあたり、あまり気にしてはいけないのが子供向けの作品であるが故の良し悪しだろう。

不要なサービスシーン

サービスシーンは2回ほどあって、胸の露出とスカートがめくれて下着が見えるというもの。

そのどちらのシーンも性的興奮を起こすというよりは、これは必要かという疑問が湧いたほどだ。

芸術性の高い色気のある演出ではなかったし、少女向けで正直2回雑に投げ込まれても扱いに困る。

胸の露出は24話の更衣室のモブ、下着が見えるのは19話のお祖母様とアンジェの2名。

パンチラは19話「嵐のハイジャック!」で、気流にあおられて揺れるゴンドラ内で使用人フランクとアンジェが転がっては壁に打ち付けられを繰り返すところである。

このとき2度目の壁打ちつけでアンジェのスカートが大きくめくれて中の白い下着が見えてしまう。

アンジェは恥ずかしがってスカートに手を押し当てた。

このときに見えたのはドロワーズではなく、子供用の白いパンツだったのだ。端にフリルがあるタイプの。

後のシーンで、お祖母様はドロワーズ(?)がちらと見えた程度。

はしたないと赤面するお祖母様に、故意ではなかったが見てしまったジャクソンは珍しく謝罪した。

さて、気になったのはアンジェのパンチラである。

アンジェの下着を見たとき最初に思ってしまったのが、「これ時代設定おかしくないか?」である。

このアニメの舞台が19世紀のイギリスであり、この時代の下着を簡単に調べたところドロワーズが検索結果としてヒットした。

この時の下着は現代のようなものと違って、ズボンタイプのものが主流。

ドロワーズは見てくれが白っぽい半ズボンなので、興奮する要素は現代においてそう無いだろう。

貴族の娘となればそういったものを用いていると思い、蓋を開けてみれば見慣れた下着の形状。

どこの誰に対してサービスを仕掛けたのだろうか。あまりに雑すぎてがっかりした記憶が残る。

総評

女王陛下のプティアンジェは1977年の12月から1978年の6月まで放映されたアニメーションである。

ストーリーは単純明快であり、当時少女を主役にした探偵ものは現代でも数が少なく、比較的珍しいものだろう。

作画は時代相応なので現代のような美麗を尽くしたものとは決して言えない。

背景やモブの描き方も、この時代のアニメならこんなものだろうと言われてしまえば、その通りである。

人が死なないスーパーライトなミステリーで、12歳の少女アンジェが毎回元気いっぱいにあちこちを駆けて謎を解き明かそうとする姿が見たいならば、この女王陛下のプティアンジェは視聴するに値するのではないだろうか。

話数は26話と標準的なイメージだ。3~4クールともなればきついが、1クールでは物足りないという人にぴったりな長さとなっている。

余談だが、このアニメはロリコン作品の始まりだの萌えアニメのはしりだのと紹介されることもある。

漫画家の吾妻ひでおが本作のパロディイラストを描いており、彼が描く漫画のタッチから萌えアニメ扱いとされたらしい。真偽は不明である。

プティアンジェの同人そのものは検索すれば簡単に出てくるあたり、当時のマニアからすれば彼女が十分魅力的であった点について、ことさら述べる必要はない。

女王陛下のプティアンジェはDVD BOXや配信サイトで視聴できる。

時間が許すのであれば、お試しに一度視聴するのはいかがだろうか。


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