レビュー:大切な人と、いつかまた巡り会えますように。プラスティック・メモリーズ

引用:https://www.plastic-memories.jp/
©MAGES./Project PM

異種族の寿命問題は人間同士のものばかりとは限らない。
身近なケースなら愛玩動物と飼い主の別れが日々どこかで起こっている。
人を模して作ったロボット、それも人工知能が発達して人間とほぼ変わりないくらいのものなら、尚更別れが辛くなるだろう。
永遠にあり続けるものなどどこにもない。
人間だって自然から見れば100年前後で軒並み入れ替わっているのだ。
それなら何故人々は別ればかりを惜しむのだろうか。
機械が高度な知能を持っていたとしても、所詮データの集合体で虚構の産物と切り捨てるには、我々の感性は少しばかり涙もろいのかもしれない。
これは一見すると機械には見えず、人種年齢様々なロボットが人間社会に溶け込んだ世界で、老朽化した製品の回収屋になった主人公の物語である。

目次

概要

アンドロイドが実用化され、普及した近未来。大学受験に失敗したツカサは親のコネを使い、世界的な大企業のSAI社に入社した。
しかし、彼に割り当てられた部署は窓際のターミナルサービス課。
ここは耐用年数による寿命を迎えようとするアンドロイド、「ギフティア」を回収するためにあるところだ。
新人のツカサに宛てがわれたパートナーは、感情を表にあまり出さないアイラという少女。
パートナーとなった2人は仕事を通して、ギフティアと人間との関わりや自分たちの今後について考えるようになる。
ギフティアには寿命がある。勿論、アイラもそこからは逃れない。
残された時間は僅か。
心と記憶、愛を見つめる物語がはじまる。

ギフティア

近未来的な世界で広く普及したアンドロイドの製品を指す。
高度な知能を持ち、それぞれのカスタマイズに応じた調整を受けて出荷されるそれらは、外から見ても人間と変わりないくらいの精巧さである。
受け答えや動作にロボットらしさが見られない、まるで実際の人と接するような反応は時として勘違いを起こしてしまう人もいる。
ギフティアの技術はツカサが所属するSAI社の独占技術であり、その製造方法をはじめ機密事項の山。
契約した人間はSAI社にオーダーメイドして購入するのだ。

このギフティアは期限が設定されている。
寿命ともいわれる時間は、約9年4ヶ月。
この期限に近づくとバグが発生して最悪暴走個体として徘徊し、人間へ一切容赦のない攻撃行動を起こすようになる。
そうなる前に回収、データの削除をして再利用する商売をSAI社は営んでおり、ツカサがいるターミナルサービス課が契約者のもとへ回収に行く。
回収に際して継続利用の選択肢はあるものの、これはデータが抹消されるので外見だけ同じ異なる人格が宿るギフティアになる。
つまり永続的にはいられず、必ず別れは訪れるのだ。

ペットロスに近いメンタルダメージを受ける契約者は多く、大半はすんなりと回収に応じることはない。
門前払い、逃走、抵抗などトラブルのたえない日常に、人間のツカサとギフティアのアイラは明け暮れる。
そうした仕事のため、エピソードはギフティアの回収に関するもの、あるいはギフティアの寿命に関するもので占められる。

失われていくもの

どこか余所余所しかったツカサとアイラの距離が近づくにつれ、両者は信頼しあうようになる。
初担当となったニーナの回収ではマニュアルに沿った対応をしてしまったために所有者から怒りを買ってしまった。
そこからアイラと幾つも仕事をする内に経験が培われ、一端の社員として活躍する。
そのコンビに大きく影を落としてしまったのは、やはり第6話の暴走事件。
アンドロイドが親代わりとなって育てられたソウタという子供。
彼から母代わりとなっていたギフティアのマーシャを回収する仕事で事件が起きてしまう。
マーシャは期限いっぱいで半ば暴走しかけていて、ソウタとの再会するタイミングが悪かったことで暴走。ツカサがマーシャへウイルス弾を撃ち込みデータ破壊することで解決した。
この件でソウタから激しく責められたツカサが仕事への見方を変えるきっかけとなった。

また、あえて継続利用を選択し続ける所有者も現れる。
魂が変わっても同じ子だと思って接ししているという言葉は、ペットを飼う人にとってはもしかしたら馴染みのあるものかもしれない。
ペットは死んだとしても、いつかまた違う形で飼い主のもとに現れるというものだ。
科学的には一切証明されていない(証明のしようがない)ので正誤はともかく、どこか夢のある考えである。
新しく購入するもの、継続して使いつづけるもの。新製品を買わなくなるもの。
それぞれの考えによって選ばれる未来。
そうした最後の瞬間に立ち会い続けるツカサとアイラの間にも信頼から好意に移り変わり、やがて2人は恋人同士になった。
だが、時間があまりにも残されていなかったのだ。

夢の時間は終わりを告げる

アイラに残された時間は、2ヶ月と少し。
お互いのためを思って恋人になることを1度は拒否したが、結局恋人になった2人。
しかし、寿命を超えてしまえば今度はアイラ自身が暴走してツカサたちに牙を向けてしまう。
アイラは幸福な自分の未来の終わりがそこまで近づいていることに怯え、涙に濡れた。
そうしてツカサから見せられた紙は、いつもなら自分たちが契約者に差し出す回収の同意書。
動揺しつつもサインすることを選ぶツカサ。
終わりの日は近づいてくる。
最後の日は夜通し語らい、最後の身辺整理を済ませて身支度をする。
皆にそれぞれ書いた手紙をそっと置いて会社を(カヅキによって強引にだが)去り、思い出の遊園地へ向かっていく。

この最終話に関してはずっと胸が苦しいまま視聴していた。
彼らはお互いの関係に終わりがあることを自覚し、抵抗せず幕引きを自分たちで行うことにしたからだ。
掃除や入浴などはこれから死ぬ人がする準備そのものだし、最後だから家にいるのではなく、思い出がいっぱい詰まった遊園地で1日ずっと過ごす。
アトラクションを堪能し、パレードを見て、ベンチに腰掛け語り合っていると、やがて日は暮れ夜になる。
楽しかった時間が、2人の日常が、その何もかもが終わってしまう。
アイラがツカサの手を引いて観覧車に向かい、係員に無理を言って乗車を許してもらう。
ここまでくれば、視聴者がここまでどのように見ていたとしても気づいてしまう。
この観覧車がラストシーンだということに。

誰もいない遊園地。明かりが消え、客もいなくなり、残っているのは2人だけ。
1周する僅かな時間に交わされた言葉や仕草を見て、思わず涙をこぼしてしまう。
アニメとしても最後の力の入れどころなので一切手抜きをしようとしない。
一部の評価ではツカサの顔がブサイクすぎると嘲笑されていたが、感情の赴くまま暴れず、それでも堪えきれない複雑な気持ちを考えるならばあの顔はおかしくない。
むしろそれを笑う人の方が問題である。真面目に向き合えないのは哀れなことなのだ。
ツカサの手によって終わりが訪れた。
カヅキは静かに下で彼らを待っており、彼の行いを評価し慰めた。
ツカサの人生はこれからも続く。
新しいパートナーを迎え、握手のために手を差し出すところで物語が終わった。

大切な人とまた巡り会えるようにと願いを込めて、アイラは回収されたギフティアたちへ言葉を贈っていた。
ツカサの新しいパートナーは、常識的に考えればアイラではない。
アイラのボディタイプだったとしても、データはそこに無い。
それでも奇跡でも妄想でも、運命のめぐり合わせなるものが実在していたならば。
そうであってほしいと願っているのは、この物語の優しい人々のために視聴者たちも祈ったことだろう。

知りたくもなかった

余談だが、アイラからお世話になった人へ書かれた手紙を読むシーンに異物が紛れ込んでいる。
確認のために視聴して今更気づいたが、課長の後ろの壁に貼られた紙にある3行の文章が書かれている。
それはかつて某所で爆発的に流行ったガチムチパンツレスリングの妖精哲学の三信である。
これは本作品と全く関係のないものであり、実際はアイラのモノローグと感動に合わせて気づかれることはそう無いだろう。
ただ気づいてしまったとき、それなりに萎えた。
遊びを入れるのは良いとして、何もこの最終話のこのシーンでなくても良いじゃないかと思ってしまった。
もしかしたら外のエピソードにも何か隠されているかもしれないが、あまりにくだらないので探したくもない。

さいごに

プラメモにはゲームがあり、PS Vita用として発売された経歴がある。
収録されたストーリーにはif展開があり、本編で終わってしまった関係の続きを楽しめるというものだった。
このゲームには各キャラクターのルートが用意されており、アニメ版準拠で物語が進む。
そしてアニメではなかった様々な情報の補足や追加があり、アイラルートへ入った時、彼らの最後がどうなったかについてはプレイヤーの想像に任せる形で終わっている。
それだけ聞くと結局アニメと同じではないかと思われるが、調べれば仔細な情報は出てくる。
もう大分古いゲームでVitaなど所有していない、ゲームするほどじゃないけど内容が知りたいという人は、1度調べて見るとよいだろう。
アニメでは悲しい最後ではあったが悲観的になることはない。
ペットたちが再び飼い主のもとへ来てくれるように、アイラもまた違う形で巡り合うかもしれない。
そう信じて希望を持ち、これからを生きるツカサの姿をまだ見ていない、また見たい人がいるならば、ぜひこの作品を手にとってほしい。



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