レビュー:ファッションに魅せられた少年少女を見守りたい、ランウェイで笑って

引用:https://runway-anime.com/
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会
この記事の要点

低身長のモデルと天才デザイナーの卵が、互いを救い合いながら頂点を目指す物語。
王道の努力と友情を描きつつ、業界のシビアな現実や葛藤をリアルに捉えている。
互いの生き様が刺激となり、不可能を切り拓いていく等身大の成長ドラマ。

目次

概要

藤戸千雪の身長はわずか158cmで、モデルとしては致命的な低身長だった。
彼女の夢はパリコレモデルになること。
周りの大人たちはこぞって反対し、時に辛辣な言葉を平気な顔で投げつけてくる。
それでも諦めきれず、千雪はモデルの道を泥臭く模索する。

一方、貧困家庭の出身で家族のために就職しようとする少年がいた。
都村育人はファッションデザイナーの夢を、自らの家庭環境によって諦めようとする。
しかし、育人は千雪と出会い、彼女の服を成り行きで作ったことによって運命が変わり始める。
諦めようとして諦めきれず、一途に夢を追いかける2人の物語が始まった。

2人の異なる視点で進む物語

千雪と育人は偶然によって出会い、お互いの夢を知った。
なんだかんだで育人が千雪のために作った服が反響を呼び、彼は千雪の父から称賛と服のデザインの買取を提案される。
千雪は、育人が仕立てた服によって158cmでもモデルとして通用するという微かな可能性を示し、再びモデルの道を歩み始める。
ただ家族のために就職しようとした育人、諦めたくても諦められずにオーディションへ出続けた千雪。
2人の閉じた未来が開かれ、そこから本編の長い物語が始まるのだ。

少年漫画に連載されていた「ランウェイで笑って」は、題材がファッションと珍しい方向。
少年誌なら重要視される要素である努力や友情などを盛り込みつつ、ファッションに興味を持たない人へ上手く魅力を訴求していた。
物語の開始時点で、千雪は身長を除いて高い完成度を誇っていた。
幼い頃から夢を実現させようと必死に努力を重ね、体型とウォーキングのレベルを維持している。

育人は家族のために服を作っていただけで、まだ外部の人間相手に何かをしていなかった。
彼の才能は本物であり、作中登場する多くの原石たちと比較しても決して劣らない。
千雪と育人の環境や実力などが対照的に取り上げられた。
したがって、描かれる物語は育人のデザイナーとしての成長物語がメインになる。

主役を千雪のみにしなかった理由は、モデル視点だけでは拡張性が乏しいと判断したからだろう。
ショーモデルの苦悩や挫折など描ける部分はある。
しかし、千雪と育人が双方未熟なド素人で始まった場合、どちらの視点で進行すればよいか悩ましくなる。
無理に成長物語を2つ分用意しようとすれば、必ずどこかで尺の都合から生じる諸問題が出るのだ。

千雪は育人の背を押したが、完璧ではない

これは偏見だが、デザインに関する才能が類稀なるものなら環境次第で一気に開花させられるのに対し、モデルは下地の積み上げが大事だ。

千雪の体型に関して、あるキャラクターは一朝一夕で作り上げたものではないときっちり褒めていた。
体型や歩く技術など、積み上げて維持する根性と習慣づくりはひたすら地味に見える。
モデルの仕事をないがしろにするべきではないが、読者の受けが悪くなれば人気が落ちてしまい、最終的に連載が打ち切りになる恐れもある。
そういった観点から考えても、千雪の完成度をある一定の高いところへ設定するのは賢明な判断なのだ。

また、千雪を今こそ売れていないがプロの一員にすることで、育人の精神的なメンターとしての役割を与えられる。
壁にぶつかり戸惑う育人は、折りに触れて千雪の背中を思い出す。
彼女の生き様は見習うべきところがたくさんあって、育人は踏みとどまって挑めるようになる。

千雪とて無敵ではない。
どれだけ技術を積んでも低身長が災いして、彼女のモデルの仕事はほぼ無かった。
ようやく仕事にありつけたと思ったら、端役の仕事で本当にモデルなら誰でもよいレベルのもの。
おまけに邪魔だからと撮影から追い出される扱いの悪さだった。
思い切って仕事を取りに海外へ足を運んでも袖にされ続ければ、誰だって心にくる。
育人は苦境にあえぐ千雪を放置はしない。
育人はいてほしい時に現れて、彼女が今最も欲しい言葉を投げてくれる。

お互いがお互いを救っているのだ。
甘やかさず、時にシビアな対応をしながら見捨てはしない。
だから2人は水をあけられた業界で、必死になって食らいつく。
才能があっても努力は怠らない。
奢っていた部分は誰かにへし折られて矯正し、次の糧にする。
幸運の女神が彼らにキスしてくれるまで、花開くときまで走り続ける。

この真っ直ぐな作りには好感が持てるし、嫌味な部分がない。
超人とは異なり、年相応の脆さも併せ持っている。
そこには等身大の叫びが確かにあるのだ。

驚くべきタイトル回収の早さ

これは放送当時SNSなどで少し言われていたが、タイトル回収があまりにも早すぎた。
原作だと違うサブタイトルになっていたが、アニメ版はまさかの第3話で使ったのだ。

第3話は1クールアニメ換算で考えると、今後の視聴の可否を判断するに丁度良いところ。
かつて「魔法少女まどか☆マギカ」の第3話が衝撃的な展開を迎えたことで一気に話題を集めたように、序盤で大きくファンを掴むには仕掛けどころなのだ。
当然、第3話のサブタイトルで採用したのも理由あってのこと。

アニメのサブタイトルは、視聴者に興味を持たせる入口のひとつだ。
次回予告のコーナーが時代の移り変わりによって消えてしまい、今では公式サイトや動画サイトの公式チャンネルで次回予告だけアップロードされていることも減ってしまった。

次週は一体どうなるのか。
続きが気になる引きをして、次の回の映像を少しだけ使って欲望を刺激する。
子供時代なら、前日の放送は格好の話題として用いられる。
今週はどうなのか、次週はどうなってしまうのか。
そういったことを話題にして、飽きもせずに繰り返した過去が誰だってあるだろう。

この作品が放送された時には、既にネット媒体で原作の序盤エピソードが無料配信されていた。
そこで有料部分になる次のエピソードこそ、アニメの第3話に相当する回だったのだ。
無料部分の気になる続きは、原作を購読するかアニメを見るか。
よく考えられた引きの手段は、何もサブタイトルだけに留まらなかった。

誰にだってある負い目や夢

競う世界はあらゆるところでシビアだ。
順位をつける以上、必ず勝者と敗者が誕生する。
それは個々人を否定するものでないが、人は比較してしまうし、権威づいたものをありがたがる。
才能や努力が合致して結果が伴えば万々歳だ。

しかし現実とはかくも不可思議なものである。
望んでいないものが他人にとっては大きな武器になり、魅力になるケースは多い。
本人は違うものを夢見ているのに、コンプレックスだった自分の身体的特徴を妬ましく思われる。
ありとあらゆる手を尽くして、ようやくたどり着いた憧れの場所から逃げてしまう人もいた。
どこへ行こうが何をしようが、2言目には著名な人物の孫だからと雑な評価を受けてしまう。

彼らは外から見たら成功している側の人間で、それ以上何を求めるのだろうと大衆が考えるのは無理からぬ話。
そこから1歩踏み込んで心情を理解する友人や同僚がいなかったことが、もしかしたら成功者に見える彼らの不運なポイントだったかもしれない。
幸い、彼らは育人や千雪がファッションの世界で挑む道のりで出会い、2人に影響されることで変化がもたらされた。
諦めかけていた夢や情熱を取り戻すきっかけを、育人たちが与えたのだ。

もちろん同じ業界で働く以上は商売敵になるときもある。
そうだとしても、互いに良い刺激となり時に協力して事を成し遂げられるというのは、得難い経験につながる。
人の一生すら変えてしまうほどの衝撃が起きる。
華やかな活躍の裏に、大きな苦悩や努力の影が必ず潜んでいる。
傍目には何一つキズのない生き方をしていても、扉1枚開けてしまえば答えが見えるのだ。

大きなショーが間近に控えていれば、常に関係者は戦場に放り込まれたような緊張感の連続に見舞われる。
僅かなほころびで何もかもが台無しになるからだ。
前夜、当日にそれは最高潮になり、フィナーレを迎えるまで持続する。
神経をすり減らしながら魂を込めるから、人々は彼らの作品、立ち振舞に拍手を送るのだ。

さいごに

移り変わりの激しいファッション業界を題材に描かれた「ランウェイで笑って」は、批判されるときにダサいや時代遅れという意見が飛び交う。
これはある程度仕方ない。
執筆されたときの情報、連載時の情勢、単行本が出回った時の状況は異なっている。
原作漫画とアニメのどちらとも、タイムラグが生まれるのだからどうしようもない。
そして出回ったものは残り続けるから、どこまで近未来的な作りにしても必ず時代は追い越す。

ダサいに関しては単に個人の問題である。
読者がそれぞれ持っている好みが合うか合わないかの違いであり、作品の良し悪しをそこで決めてしまうのもある意味正しいが少々乱暴だ。
こればかりは実際に本作品を手にとって読んでみてもらうしかない。
あなたの感性がベストマッチするならば、するする最後まで楽しめるに違いないからだ。

「ランウェイで笑って」の原作などを下記リンクで紹介しているので、1度手にとって見ていただきたい。
またサブスクでも配信されているので、がっつり最後まで見たいなら登録するべきだろう。

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