レビュー:吸血鬼と人類の終わりなき争い、終わりのセラフ

引用:https://owarino-seraph.jp/index.html
©鏡貴也・山本ヤマト・降矢大輔/集英社・終わりのセラフ製作委員会
目次

概要

未知のウイルスによって大人は死んだ。
子どもたちは吸血鬼たちによって地下深くにある拠点に連れて行かれ、血を吸われることでかろうじて生きている有り様だった。
孤児院で暮らしていた優一郎はミカエラの脱出計画によって、孤児院の生き残った子どもたちと共に脱走を図る。
しかし、それは吸血鬼の罠であり、まんまと引っかかった優一郎たちは仕掛け人のフェリドによって一方的な殺戮を受けてしまう。
ミカエラの決死の行動によって優一郎だけが地上へ逃げ延び、そこで出会ったグレンの誘いに乗る。
そこは吸血鬼を狩るために結成された組織、日本帝鬼軍の吸血鬼殲滅部隊。
月鬼ノ組に入隊した彼は、同期の仲間と共に吸血鬼を討ち果たすべく邁進する。
一方、強大な力を有しているはずの吸血鬼側でも問題が起きていた。
情報が漏れているかもしれないという懸念、裏切り者は一体誰なのか。
人間と吸血鬼、そして終わりのセラフとは。
複雑な運命に、優一郎は翻弄されていく。

二転三転する関係図

終わりのセラフを視聴中に思っていたのは、関係図がころころと変わっていく点だった。
人類は味方、吸血鬼は敵。この構図は大きくずれていない。
その中でも派閥抗争のようなもので足の引っ張り合いや情報の横流しといった裏切り行為が蔓延していた。
妙に嗅覚の利いた展開を双方行うので末端なら気づきにくい事実だ、が実力者や幹部連中は欺ききれない。
それすらも織り込んでそれぞれが最大利益を取ろうと動いている。
単にバトルアクション系というより、謀略とアクションの融合というべきだろうか。
ある戦場でどれだけの功績があろうとも、全体の計画遂行からしたら使えるルートがひとつ潰れた程度の扱い。
日本帝鬼軍と吸血鬼の戦争だけで色々あるというのに、吸血鬼は各幹部連中ごとの派閥があるし、日本帝鬼軍も柊家とグレン、主人公の優一郎がいるシノア隊など複数のグループがいる。
最も権力がないのは当然末端のシノア隊だが、優一郎には不思議な何かが内包しているので重要度は高い。
優一郎はグレンによって地上での生活、目標を与えられたといってもいい。
だからグレンの誘いや命令は基本従っている。だが、そのグレンの様子がどうにもおかしいのだ。
好意的かと思えば冷徹な態度を取る。演技か操られているのか分からないくらい境界が曖昧に見えた。

本作はアニメ版だと11巻までの内容を元に制作されている。
完結していない上に現在まで刊行されている巻数から見ても序盤の山場程度で終わっているため、端的に言うならここから第2幕というところで終わっている。
したがって関係図はおろか一部重要な設定も開示されきっていない。
終わりのセラフとは、人類・吸血鬼それぞれの内部抗争の結果はどうなったのか、そもそも鬼呪装備の中にいる鬼はどこからやってきたのか。
仔細な設定、情報はアニメ化されなかった後の話でどんどん明かされていくので、アニメだけで本作の全てを知るには圧倒的に力不足である。
そこでまずは終わりのセラフという作品そのものと、自分の好みは合致しているかで考える。
合致しているうえで更に漫画を読むことに抵抗がなければ、原作を購読すると一層楽しめるだろう。
そこまでしたくないけどキャラデザが好き、序盤の流れは見るに耐えうると判断したならそれも良し。
長寿作品故の壮大な設定、伏線の多さに二の足を踏みそうになっても仕方ない。

境遇の重さ

世紀末めいた世界に突入しているので、かつて地上にあった施設は大体が半壊している。
インフラも消え去って久しく、壁の中で比較的安全(それでも事件は起きる)に生きているなら相当恵まれていると考えてよい。
外は辛うじて生き残っている人間と、拉致した人間を飼いならす吸血鬼、餌として生かされているだけの人間の3種におよそ大別される。
生きていくには色々なものが必要なので、崩れた建物の中から食料品や水の確保をするべく子どもたちでさえ死に物狂いで物資漁りをする。
吸血鬼に出会ったらその時点で死か未来の終わりを覚悟しなくてはならない。
フィジカル面で圧倒的に敗北しているし、吸血鬼は昼間でも平然と活動する設定だ。
吸血鬼の弱点は紫外線。中和するための装置がなければ従来の吸血鬼と同様に、太陽光によって焼き潰されていく。

外で生きていくのに必死な人間が吸血鬼を倒せる可能性は皆無だ。
吸血鬼同士か、鬼呪装備を携えた日本帝鬼軍の一員でなければ勝負にもならない。
そのようなどうしようもない世の中だと、生まれと育ちが綺麗な奴など希少だ。
それは主人公がいるシノア隊に目を向けても変わらない。
優一郎は孤児院に送り込まれ、孤児院の生き残りは優一郎とミカエラのみ。
ミカエラは吸血鬼になってしまい、種族で見るなら敵対関係にある。
君月と早乙女の両親は死に、君月には病床の妹、与一の姉は吸血鬼に殺されている。
リーダーのシノアと途中参加の三葉は生まれだけなら上澄み。
しかし三葉は姉から使えないゴミのような扱いで妹として認知されない。
シノアは柊家の一員だが、家族連中が軒並み頭おかしい異常者ばかり。
おまけに兄たちは権力闘争に明け暮れ、吸血鬼を倒すのは当然として、戦後の勢力において優位に立つための計略を張り巡らすほど。
誰も彼も幸せな環境にいないので、不幸自慢が自慢にすらならない地獄絵図だ。
他のキャラクターも何かしら失ったものはある。
軍の一員として戦いが続けばそれが多くなることも承知の上で戦う。
誰だって自分の利益が最大になるよう動きたくなる情勢になっているのだ。
手を繋いで平和的解決を探ろうという動きはない。
物語冒頭のウイルス攻撃の時点で既に絶滅(しない程度に調整された)戦争を仕掛けられているのだから。

意外に馬鹿じゃない

この手のバトルものの主人公といえば、直情の馬鹿がそれなりにいるとイメージしやすい。
頭の悪さは熱さと根性でカバーすれば、途端に少年漫画らしさを感じる王道ぶり。
優一郎も例に漏れず熱さや根性で突っ込み、シノアや君月といった冷静なキャラがフォローする構図ばかりになるかと思った。
しかし優一郎は意外にも頭が動く場面もある。
それはシノア隊が海老名サービスエリアへの集合時間に遅刻した際、リーダーのシノアが追求をいつものように飄々とした態度で切り抜けようとしたが、グレンに一喝されたところだ。
周りの部隊からも批難の視線を受ける中でシノアは固まってしまう。
ここで優一郎があえて矢面に立つことで攻撃される対象を自分にすり替えた。
グレンは優一郎の行動がシノアを庇うためだと見抜いたが、規律の遵守は軍隊において絶対。
衆目に晒す形で罰を与えてこの場を収めたのだった。

優一郎は仲間思いで大のために小を犠牲にする作戦へ反抗したりもする。
三葉と初めて組んだときも隊全体の危険を招いたと彼女から叱責されたが、悔いはないとした優一郎の態度は常に一貫したものだった。
三葉の過去の苦い経験から言葉が出てしまったこともあって、始めこそ険悪な関係になりかけた。
それでもまっすぐに、時には頭を使って戦う姿は誰にとっても頼もしさを覚える。
吸血鬼の実力者と対峙して偶然にも見逃して貰えた際、あまりの恐怖に膝をついて震えるシノアの姿があった。
いつも人を食ったような態度は不安の裏返しか。
想定外の事態、特に強大な敵と遭遇した場合の切り返しの甘さに年相応な少女だと再認識させられる。
いくら殲滅部隊とはいえ、鬼呪装備を持ってようやく化け物と戦える程度の能力しかないのだ。
それが幹部連中、もしくはそれに近い位置の敵と刃を交えたならどれほどの被害が出るのか。
実力がなまじあるせいでかえって恐怖に囚われやすい。
シノアの優一郎への恋慕は後に利用されてしまうが、アニメだと敵に使われることはない。
一度暴走してしまった優一郎を介抱し続けるシノアの姿を見れば、誰だって彼女が少年のことを思っているか分かるだろう。

さいごに

終わりのセラフは世紀末じみた世界でのバトルものと、各勢力で巻き起こる謀略の積み重ねを見ていく物語である。
終盤の実験、ある能力の顕現についてはアニメの中だけで判断できる材料が皆無だ。
終わり自体がまだまだ続くといったものであり、2クールかけてそこそこ駆け足で物語を作った割には何も解決していない。
そこから先は漫画を購入するべきだろう。
今後新たな敵と味方、明かされる設定、二転三転する協力・敵対関係は目まぐるしさを感じられる。

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