レビュー:勇気と根性で絶望に挑むのが、結城友奈は勇者であるなのだ

引用:https://yuyuyu.tv/season1/
©2014 Project 2H

筆者はかつてこの作品を見る前、名前だけで視聴を避けていた。
どう見ても日常系にしか見えないキャラクターデザイン。
結城友奈は勇者などと「ゆ」を意図的に連続して入れたタイトルセンスなどに、食指が動かなかった。
これを知ったのは遊技機として実際のお店に並んだときである。
そのとき勧められたから遊んだものの、大してハマらずつまらなかった。

ただどうにも引っかかりを覚え、後日1人で再び遊ぶことにした。
遊技演出にてアニメのストーリーがある程度説明され、実際のアニメシーンもぶつ切りながら見せられた。
筆者はそこで思わず落涙したのだ。
断片的な情報でも伝わってくる、少女たちの胸の内から発せられた悲痛な叫びに心が動く。
莫迦にしていた物語がかくもシリアスの塊で、ここまで美しく描いていたものかと。
帰宅してアニメを第1話から視聴。そこでも涙した。
当時は相当にこの作品群へ入れ込んでいた。
その時を思い出して、紹介していきたい。

この作品のポイント

ヒロインたちが変身して敵と戦う
圧倒的な戦力差、強大な異形の怪物たち
隠された謎が明かされる度に増える絶望要素

目次

概要

神世紀300年。
四国以外の土地は謎のウイルスによって滅び去り、四国だけは神樹様の加護によって辛うじて人が住める唯一の土地になっていた。
結城友奈は讃州中学校に通う中学2年生。彼女は同校の部活動の勇者部に属している。
そこは人のために勇んで行動することを信条に掲げており、部員は地域住民のお願いを叶える何でも屋として日々活動していた。

平和な日常はある日唐突なアラームによって終わってしまう。
人々は動きを止め、空を飛ぶ鳥たちも動かなくなり、時すら固着した。
あたり一面が極彩色に輝く。
眩さが目に慣れてくると、校舎ではなく樹木のようなものがびっしりとあちこちに茂る謎の空間だった。
部長の犬吠埼風から告げられる事実。
世界を守るために、外部から侵入してくるバーテックスなる敵を倒さなくてはならない。
友奈は犬吠埼風と妹の樹、そして親友の東郷美森と共に神樹の力を纏い、本物の勇者として終わりが見えない戦いに身を投じるのだった。

公式による情報隠し

序文で筆者が見るのをためらったように、何も知らない人がこの作品を手にするのは困難に思える。
キャラの見てくれが日常系、タイトルの何ともいえない味わい。
ぱっと冒頭を見たところで日常系の香りしかしない。
おまけに公式サイトの紹介文すら意図的に情報を隠しているのだ。
まあまあ意地の悪いつくりである。

結城友奈は勇者である(以下、ゆゆゆ)は公式サイトで情報をわざと絞っている。
これは続編も全て同じように制作され、ストーリー紹介を見ても1文だけ。
更にアニメのカットもわざと日常のシーンだけを選んでいる徹底ぶり。
気になるなら本編を見ろと言わんばかりの挑戦状を叩きつけてくるのだ。

これは不親切なやり口であるものの、期待や衝撃の大きさを余すことなく受け取れる配慮とも取れる。
初見のときにしか得られない心の動きというものが、誰にでも必ずあるし、訪れる。
しかしどこか別口で情報を事前に仕入れてしまったら、どこかで展開の予想を組み立ててしまう。
それで感動を削がれるくらいなら、いっそ分からなくしてしまう方がある意味賢いかもしれない。

日常の裏は地獄への道

ゆゆゆは日常系の皮を被ったしんどい作品である。
これは友奈達の平和な日常が、常に保証されているわけではなかったからだ。
神樹なる絶対的な加護によって人類の生存権は僅かながらも残った。
ただし、神樹様に選ばれ勇者になったものは事情が変わる。
常にあると思いこんでいた穏やかな世界の裏、真相の一端を知ってしまう。
この世界は決して安寧で包まれてはいない。
外部から不定期にやってくる謎の異形の怪物、バーテックスなる敵を排除しなければ四国は滅んでしまうのだ。

戦うための舞台は神樹様が特殊な空間(樹海)を用意して、その中で勇者とバーテックスが戦う。
バーテックスが神樹様に到達したら全滅確定。
ただし樹海内での戦闘行為によって樹海そのものが傷ついた場合、現実世界で何かしらの現象に書き換えられる。
これが恐ろしい設定であり、樹海内の戦いは一般人に観測できないし、現実世界への現象書き換えも予想できないのだ。
例えば何らかの事故、災害として現実に影響を及ぼしてしまう。
死傷者が出ることもある。
またすぐにこの設定は忘れられた(実質なかったことにされた)が、バーテックスを撃退するには封印の儀式を行う必要があり、時間制限がある。

いつどこで始まるかは見当もつかない。
友奈達は大赦という神樹様を祀り、社会に大きく影響を及ぼす組織から特殊なスマホを渡されている。
スマホのアプリに勇者変身のシステムを組み込んだのだ。
実に現代的な変身アイテムである。
一般的なスマホの機能も有しており、見た目も普通のものと変わりない。
そのため、普段使いしていても不審がられない。
変身行為は樹海の外(日常空間)でも使用できる。
しかし勇者たりうる資格がない者、もしくは勇者に認められていてもメンタルダメージで変身できないときは、いくらアプリを起動しようとも変身できない。
世界の命運は、常にうら若き少女達にかけられている。

勇者へ変身できる人間は、成人前の若い少女のみ。
大赦や神樹様が少女愛的な執着に罹患した、救いようのないド変態扱いされることもファンの間ではままある。
これは無垢な少女こそ必要とみなしており、年齢ではなく純潔かどうか。
勇者とは神(神樹様)に仕える巫女のようなもの。
実際は勇者と巫女は別枠として神樹様に仕えており、極稀に両方を兼ね備える人物が登場する。
巫女は神樹様の神託を受け取れるメッセンジャーとしての役割が主。
戦うのは勇者の仕事。
劇中だと(主要人物以外の)巫女はほぼ登場せず、一部のシーンでさらっと出てくる。
どちらにしても、大人と神々からいいように扱われる哀れな存在でもあるのだ。

もし彼女達が何らかの形で死ぬとどうなるか。
死体が残っていれば、神樹様が通常空間へ返してくれる。
知らない人から見れば、いきなり死体が出現したように思われる。
人や物の帰還場所は指定をかけることが可能であり、友奈達は基本讃州中学校の屋上へ転送される。
離れ離れになった状態で戦闘終了していたなら、答え合わせが訪れるだろう。
生きているか、死んでしまったかのどちらかが。

対話すら起きない殲滅戦

雑魚だが一生湧いて出てくる星屑と、数こそ12体と少ないが強大なバーテックス。
この2種類の敵がどちらも厄介。
どちらもやたら強い(面倒くさい)くせに放置すると樹海を侵食するので、負傷したからといって完全撤退ができないのだ。
そもそも神樹様が勇者達を通常空間へ逃がしてはくれない。
仮に逃がしたところで、敵が神樹様を倒してしまえば人類が滅亡確定なので不可能なのだ。
つまり戦闘が始まれば、どちらかが死ぬまで殺し合わないといけない。

作中で友奈達は多くの攻撃をバリアで凌ぐ。
精霊バリアは、神樹様によって致命傷になりうるものだけを自動的に選んでくれるのだ。
もちろんバーテックスの攻撃はほぼ即死級の攻撃力。
被弾すれば、よほどのことがなければバリアが発動している。
雑魚の星屑は倒してもキリがなく、物量で圧殺を仕掛けてくる。
かといってバーテックスの攻撃力は凄まじく、精霊バリアがないと致命傷になるレベル。
かなり優秀だから防御は実質バリア頼みになるが、バリアの力の源は神樹様。
使えば使うほど神樹様の力は消耗する。
力が削れてしまえば、敵による侵食と同様に外の現実に悪影響をおよぼす。
戦いが激しくなるにつれて、比例するように現実が終わっていく。誰も知らないまま。

神樹様は過度な消耗を避けるため、勇者たちへの攻撃の中で致命傷にならないものは素通しする。
するとどうなるか。
何のひねりもなく、彼女たちは骨折、捻挫、裂傷など負傷するのだ。
だから戦いが激しくなると、大体血まみれになっている。
ゆゆゆの全シリーズで出血(グロ)表現はある。後期になればなるほど過激に。

皆、命がけなのだ。
戦わなければ死ぬし、逃げれば滅んで終わる。
怪我はゲームみたいに治らない。
いつ来るか予想をたてても外れるし、相手は異形の怪物なので交渉など一切ない絶滅戦争。
どう考えてもハードモードを通り越しているのだ。
文句を言っても何も無いし、泣き言を連ねても敵が手加減してくれるはずもない。
動かなければやられる。星屑になぶり殺されるか、バーテックスに一瞬で殺されるか。
致命傷でなければバリアは作動しない。
失血死、メンタルダメージによる廃人は、当人の責任問題になる。

人類の存亡をかけた戦いを、たかがいち中学生にやらせている異常さ。
何をどうみても、どう捉えても未来が見えなくなりそうな絶望感。
樹海だけは美しく見える色彩なのに、そこは死と血が吹き荒れる地獄。
勇者の力を持った選ばれしものしかいないので、外部からの助けなど勇者以外来ない。
その勇者の数は相当に少ない。
後々で知る羽目になるが、この世界はそこそこ詰みかかっているのだ。
だからこそロクでもない地獄が平和な世界の裏に潜んでいる。

境界ひとつ踏み越えてしまえば、終わりが横たわっている。
おまけに勇者であること、活動内容は機密事項として外部への流出は禁じられている。
お役目に選ばれた、ということしか分からないのだ。
人には理解されず、認知できない世界で死に怯えながら戦い続ける。
一部のユーザーの間ではゆゆゆの絶望感は、「蒼穹のファフナー」に通じるものと評された。
もしくは終わりのない戦いは「マヴラヴ」作品を想起する。
筆者もそうだと思っている。
どちらも主人公たちに対し、世界が余りにも残酷なのだから。

地獄ゆえに、少女たちは日常を愛したい

友奈達の世界はひどく脆いバランスで成り立っている。
明日どころか次の瞬間には樹海送りになっているかもしれない。
友奈達は過酷な運命に翻弄されるからこそ、日常を愛している。
仲間が増える、倒しても倒しても新しいバーテックスが現れる。
友奈達は学生生活や勇者部の活動を放棄せず、一生懸命に暮らしている。
それは自らが置かれている状況への適応のためだろうか。

やりたいことがなかった樹には、歌手になる夢ができた。
ひたすら自分を磨き、勇者として強くなろうとする三好夏凜は、友達がいる大切さを学んだ。
時には誰かが躓き、命を張った喧嘩(仲間割れ)だって起きる。
終わりが見えていても関係ないのだ。
今ここにある日常を全て否定してしまったら、一体どこで生きていけばいいのか分からなくなるから。
だからこそ、それらを奪っていこうとするバーテックスが、強いてくる大赦へ憎悪が募っていく。

このアニメを見れば、誰もが1度は大赦への憎悪、大人(世界存続のための決断)への強烈な殺意を覚えるだろう。
視聴者の感情は、大赦が許せない気持ちで満たされているのは当然だ。
しかし、視点を四国全域で生きている人々へ向け直せば、大赦の思想や遂行のためのあれこれは正しい。
最大多数の幸福を得るために、一部の少数を切っているだけ。
物語(世界観)の構造として必然だ。
その代価を支払い続けているのは、自分達ではなく何も知らなかった少女というだけ。
真実を知れば知るほど、勇者とは何か、お役目の真意はどこにあるのかが見える。
主題歌の歌詞にも示されているのだ。
真実はかくも人を魅了し、残酷だと。

命を食われ、夢を奪われ、尊厳すら捨てさせられる。
ある少女は激情に囚われ、仲間へ殺意を込めた刃を振り下ろした。
別の少女は未来を悲観し、世界そのものを終わらせようとした。
しかしそうした行為すら理由がある。
選ぶだけの事情があり、同情する余地があり、否定しがたい証拠が描写として出される。
物語が進むほど心が苦しくなるのだ。

他作品の違いは、心のあり方

しばしばゆゆゆは、他の日常系シリアス作品と比較される。
その中で筆者は「魔法少女まどか☆マギカ」の違いを強く感じたのは、最終回である。
世界のため、友達のために自分を使い尽くして、全てを救う決断へ至ったまどか。
いくら世界のため、大切な皆を救うためとはいえ、死にたく(消えたく)ないと嘆いた友奈。
最初はまどかの行いを凄いものを見たと思ったが、ゆゆゆを見てからは評価が一転した。
中学生が抱く感情や決意にしては、かなり異様に思えたからだ。
友奈は1番の友達の美森へ等身大の弱さを吐露して、やろうとしたことを止めた。
まどかは決断する瞬間、誰の手も借りなかった。
最高の友達であるほむらに考えを伝えたのは、契約して魔法少女になった後。
このとき、まどかが超人のように見えていた。

まどマギの世界ではループが無数にあり、因果関係の絡まりが幾重にもなった果ての変化ともみえる。
そうだったとしても、本当に人間として全て失ってまで世界を救いたいと思えるのか。
それならまだ友奈達のように事実に打ちのめされ、自分の命を惜しみ、最後まで迷って涙し続ける。
そこから見出した答えを信じて立ち上がる方が、よほど人間らしく感じたのだ。

まどかの最後は、それはもう人間らしさを感じなかった。
振り切ってからの行いに何の躊躇も見られず、呪いのように固定した使命に突き動かされているようにも見える。
まるでシステムのように、明らかに意識や価値観がずれこんで人らしさが欠如していた。
その違和感に気づかなければ自然と見逃していた。
気づいたから、どうしても見逃せなくなった。

両者とも最終的には世界を救った。
大きすぎる代償を払いながら。

さいごに

日常系の振りをして何も知らぬ視聴者を沼に叩き落とすのは功罪あれど、これはプラスに働いただろう。
あくまで恐るべきは外から来る敵。
大赦は人類を活かすためのシステムのために動いているだけだ。
そこに善悪はない。
過度に不快感を煽るような露悪的表現はほぼなく、シリアスと牧歌的日常を繰り返す物語である。

ゆゆゆは関連シリーズも豊富であり、同じ時間で描かれる物語、過去のある部分を描いた物語とバリエーションが多い。
どれを読んでも基本シリアスいっぱい。
時折挟まれる和やかなシーンとの落差によって、首がもげそうになる。
ギリギリの世界を必死に皆で生きようとする少女たちの戦いが好きな人は、関連書籍も余さずチェックしていただきたい。
下記リンクにゆゆゆシリーズの書籍等を紹介しているので、確認の後に検討して頂けたら幸いである。

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